【2023年度】 キャリアアップ助成金の変更点を解説|申請のポイント5つも紹介

キャリアアップ助成金は、非正規雇用の従業員に対して正社員化や処遇改善を行った事業主に支給される助成金です。
2023年度に助成金の申請要件が一部変更となり、電子申請が導入され、申請業務が効率化できるようになりました。

今回の記事では、キャリアアップ助成金の2023年度の変更点を解説し、申請時に押さえたい5つのポイントもご紹介します。

1. キャリアアップ助成金の概要

キャリアアップ助成金は、非正規雇用の従業員に対し、正社員化や処遇改善などの取り組みを行った事業主が対象の制度です。
非正規雇用の従業員に対して企業内でのキャリアアップを促すことで、従業員の意欲や能力を向上させて優秀な人材を確保し、事業の生産性を高める目的があります。

2. キャリアアップ助成金の2023年度の変更点とは?

2023年度におけるキャリアアップ助成金の変更点は、以下の4つです。

  • 電子請求が可能になった
  • 社会保険適用時処遇改善コースの新設された
  • 生産性要件の加算措置が廃止された
  • 正社員コースの3つの変更点がある

それぞれの変更内容についてご紹介していきます。

2-1. 電子申請が可能になった

2023年6月より、電子申請できるようになりました。
電子申請には、以下のようなメリットがあります。

  • 入力時に必要情報を繰り返し反映できる
  • 自分の都合のよい時間や好きな場所で申請できる
  • 申請状況の確認ができる

電子申請がはじめての場合は、gBizIDアカウントの取得が必要です。

gBizIDに関する詳しい解説は、以下の記事をご確認ください
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【より便利に】gBizIDがリニューアル!基本~新しくなった内容を紹介

2-2. 社会保険適用時処遇改善コースが新設された

経済対策の取り組みとして、キャリアアップ助成金における「社会保険適用時処遇改善コース」が新設されました。
新たに社会保険の適用となる従業員に対し、収入を増加させる取り組みを行った事業主が対象となります。
年収の壁を気にせずに働ける環境づくりの後押しが目的です。

2-3. 生産性要件の加算措置が廃止された

令和5年4月以降、以下の4つのコースにおける、生産性要件を満たした場合の加算措置が廃止となりました。

  • 正社員コース
  • 賃金規定等共通化コース
  • 賞与・退職金制度導入コース
  • 短時間労働者労働時間延長コース

生産性が1〜6%以上向上した場合に助成金が割り増しとなる措置でしたが、廃止が決定し助成額が見直されています。

2-4. 正社員コースの3つの変更点がある

キャリアアップ助成金のコースの中でも広く活用されている「正社員コース」では、2023年以降に以下3つの変更点があります。

  1. キャリアアップ助成金と人材開発支援助成金で正社員化する場合、加算の対象となる訓練が統合・拡充
  2. 人材開発支援助成金の計画届とキャリアアップ計画を一本化
  3. 有期実習型訓練修了者の要件

上記2・3の変更内容には、一定の条件が設けられています。

3. キャリアアップ助成金7つのコース|対象者と対象経費

キャリアアップ助成金には7つのコースがあり、それぞれの概要は下記のとおりとなっています。

概要
正社員化コース 非正規雇用から正規雇用に転換した場合に支給される。支給額は、正規雇用前の雇用形態が有期か無期かなどによって異なる。
障害者正社員化コース 障害者雇用を促進し、職場への定着を図るため、主に以下の措置を実施した場合に支給される。

・有期雇用の従業員を正規雇用または無期雇用に転換する
・無期雇用の従業員を正規雇用に転換する

処遇改善支援賃金規定等改定コース 非正規雇用従業員の処遇改善に関する助成金。
該当従業員に対する賃金規定を改定し、3%以上賃上げした場合に支給される。
賃金規定等共通化コース 非正規雇用従業員の処遇改善を通じてキャリアアップを目的としている助成金。
該当の従業員に対し、正規雇用と共通の賃金規定を作成、適用した場合に支給される。
賞与・退職金制度導入コース 該当の従業員について、賞与や退職金制度を導入し、適用した場合に支給される。
短時間労働者労働時間延長コース 該当の従業員について、以下の処遇の改善措置を実施した場合に支給される。

・所定労働時間を週3時間以上延長
・所定労働時間を週1時間以上3時間未満延長
・該当従業員を新たに社会保険の被保険者とする

社会保険適用時処遇改善コース 有期雇用労働者などに対して新たに社会保険を適用した場合に支給される。

全コース共通の対象事業主は以下のとおりです。

  • 雇用保険適用事業所の事業主
  • 事業所ごとに、キャリアアップ管理者を配置している事業主
  • キャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の認定を受けた事業主
  • 対象従業員の労働条件・勤務状況・賃金支払い状況が明記された就業規則を整備している事業主
  • キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主

また全コース共通して要件の対象となるのは、非正規雇用の従業員です。
たとえば、以下のような従業員が該当します。

  • 雇用期間が通算6か月以上の有期契約従業員
  • 無期雇用の従業員
  • 6か月以上、同一の業務を継続して従事している派遣従業員

各コースの助成金支給要件の詳細は、公式HPでご確認ください。

4. キャリアアップ助成金の申請から受給までの流れ

キャリアアップ助成金を活用するためには、各コースの取り組みを実施する前日までに「キャリアアップ計画」を提出する必要があります。
キャリアアップ計画は、労働局またはハローワークの援助を受けながら作成しましょう。

正社員化支援に関するコースの場合は、以下の流れで申請・受給となります。

  1. キャリアアップ計画を作成し、労働局またはハローワークに提出する。
  2. 正社員への転換規定がない場合は、就業規則等の改定を行う。
  3. 就業規則等に基づく正社員化を行う。
  4. 正社員化後、6か月の賃金(正社員化前6か月よりも3%以上増額)を支払う
  5. 6か月目の賃金支払日の翌日から2か月以内に支給申請する

処遇改善支援に関するコースの場合は、以下の流れで申請・受給となります。

  1. キャリアアップ計画を作成し、労働局またはハローワークに提出する。
  2. 就業規則の改定など、取り組みを実施する
  3. 取り組み後、6か月の賃金を支払う。
  4. 6か月目の賃金支払日の翌日から2か月以内に支給申請する

計画届や支給申請に必要な様式は、公式HPのダウンロードページをご確認ください。

5. キャリアアップ助成金を申請する際の5つのポイント

キャリアアップ助成金は審査が厳しく、不正や不備があると支給されない恐れがあります。
申請の際は、次の5つのポイントを押さえておきましょう。

5-1. キャリアアップ計画は正社員化などの措置前に提出する

申請の流れで1番最初に行うべきは、キャリアアップ計画の作成です。
計画の作成は正社員化の制度を導入する準備であるため、計画前の措置は対象となりません
各コースの該当措置を実施する前に、計画を作成しましょう。

5-2. 試用期間は慎重に定める

企業によっては、一定の試用期間を設ける場合があるでしょう。
正社員と同等の待遇かどうかに関わらず、試用期間中は無期の非正規雇用とみなされます。
この場合、「一定の試用期間(実質有期)から正規への措置」での申請にはならず「無期から正規」の申請として審査されるため、受給額への影響があります。

試用期間を定めている場合には、試用期間が終了した翌日に正社員転換したと判断されるため、試用期間については慎重な検討が必要です。

5-3. 申請時にミスがあると受給されない可能性がある

キャリアアップ助成金は、過去に多くの不正受給があった経緯があるため、審査が厳しくなっています。
厳しい審査を通過するためには、次に挙げる3点を押さえておきましょう。

5-3-1. 就業規則への明記を忘れない

以下の内容は、ルールとして就業規則に明記しましょう。

  • どの従業員がどの制度の対象か
  • 「賞与または退職金制度」と「昇給時期」
  • 有期雇用契約の場合は契約期間

明記をし忘れてしまうと、審査に通らない可能性があります。

5-3-2. 申請後は訂正できないため不備に気を付ける

最終的な支給申請は、該当の措置をとって6ヶ月分の賃金を支払った後です。
支給申請を済ませてから誤りに気がついても申請した後では訂正できないため、不備がないよう慎重に進める必要があります。

5-3-3 審査は申請から6か月かかる場合もある

申請する都道府県やその時の混み具合などの状況にもよりますが、申請から審査まで半年ほどかかる場合があります
計画を立ててから助成金の受け取りまで、通算1年程度はかかると認識しておきましょう。

5-4. 支給申請期間中に手続きする必要がある

キャリアアップ助成金の申請は、該当の措置をとって6ヶ月分の賃金が支払った翌日から2か月以内の支給申請期間があります。
支給申請期間内に手続きを終えるよう、早めに対応しておくと安心です。

5-5. 専門家への相談を検討する

審査の厳しいキャリアアップ助成金を受給するためには、申請期間やミスに十分注意して進める必要があります。
通常業務を行いながら適切に計画を進めるには時間と手間のかかるため、専門家への相談がおすすめです。

キャリアアップ助成金の申請を検討されているなら、補助金活用支援合同会社への相談もご検討ください。

6. キャリアアップ助成金を活用して非正規雇用従業員の働く環境を改善しよう

キャリアアップ助成金を受給するためには、キャリアアップ計画を作成したり、支給申請を行なったりなどの手続きが必要です。
2023年6月より「雇用関係助成金ポータル」で各コースの電子申請が可能となり、申請手続きが効率的に行えるようになりました。

この機会にキャリアアップ助成金を活用して、年収の壁に悩む非正規雇用従業員が働く環境の改善に取り組んでみましょう。
キャリアアップ補助金を活用する際に分からないことや不安があれば、補助金活用支援合同会社にご相談ください。

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監修者プロフィール

補助金コンサルタント 上田 晃生

1977年生まれ神奈川県横浜市出身。
OA機器の営業から飲食業界に入り店長・統括等を経験し、経営コンサルタント会社へ転職。

2021年に補助金活用支援合同会社を設立し独立。

経営者の潜在的な要望を引き出し、事業拡大を実現する「コンサルティング型」によって、1年間で100件以上の補助金申請をサポートし、1憶5千万円以上の採択を実現。

最適な補助金の提案から受給まで、完全サポートしている。