近年の労働力人口は減少傾向にあり、人材確保に難航する企業は少なくありません。
人材確保に厳しい状況下でも企業の生産性を向上するべく、従業員のスキルアップを図りたいなら、人材開発支援助成金の利用が解決策のひとつとなります。
今回は、人材開発支援助成金の概要や助成内容、申請の注意点についてご紹介します。
目次
1. 人材開発支援助成金の概要
人材開発支援助成金は、事業主が従業員に対して、職務に関わる知識や技能の習得をさせる目的のもと、職業訓練等を計画・実施した場合に活用できる助成金です。
厚生労働省によって設立された助成金で、計画・実施した訓練の経費や、訓練期間中の賃金の一部などを助成できます。
助成金を活用すると、職業訓練や人材開発の取り組みを実施しやすくなり、従業員のキャリアアップを図り、生産性を向上することが可能です。
人材を確保するだけでも精一杯な企業にとっては、人材を育成する資金を確保できる大きなメリットになります。
人材開発支援助成金には、以下の7つのコースがあり、コースにより対象者や対象となる訓練が異なります。
- 人材育成支援コース
- 教育訓練休暇等付与コース
- 建設労働者認定訓練コース
- 建設労働者技能実習コース
- 障害者職業能力開発コース
- 人への投資促進コース
- 事業展開等リスキリング支援コース
各コースの対象者や、対象となる訓練について、順番にご紹介します。
2.人材開発支援助成金の対象者
人材開発助成金の対象者は事業主ですが、対象事業や団体によって選択できるコースが異なります。
各コースの対象者は以下のとおりです。
コース名 | 対象者 |
人材育成支援コース | 事業主 事業主団体など |
教育訓練休暇等付与コース | 事業主 |
建設労働者認定訓練コース | 中小建設事業主 中小建設事業主団体(経費助成のみ) |
建設労働者技能実習コース | 中小建設事業主 中小建設事業主団体 (※支給対象:男性・女性労働者)中小以外の建設事業主 中小以外の建設事業主団体 (※支給対象:女性労働者のみ) |
障害者職業能力開発コース | 事業主 事業主団体 社会福祉法人など |
人への投資促進コース | 事業主 |
事業展開等リスキリング支援コース | 事業主 |
上記の対象者に該当したうえで、従業員に対して行う訓練が対象となるコースを選択する必要があります。
3. 人材開発支援助成金の助成内容|対象となる訓練
人材開発支援助成金の対象となる訓練には、OJT(On the Job Training)とOff-JT(Off the Job Training)があります。
OJTとは、仕事をしながら上司・先輩から実際に技術などを学ぶ方法です。
実際に取り組みながら技術を身につけられるため、即戦力を育てられるメリットがあります。
一方、Off-JTは、実務を行う場所以外で、研修やセミナーを受ける方法で、業務を行う上で、必要な知識や技術のインプットが目的です。
人材開発支援助成金の助成内容、対象となる訓練は、各コースによって以下のとおり異なります。
コース名 | 助成内容または対象となる訓練 |
人材育成支援コース | 1. 10時間以上のOff-JT 2. OJTとOff-JTを組み合わせた訓練 ・中核人材育成のために6ヶ月以上実施する場合 ・非正規従業員等を正社員へ転換する目的で2ヶ月以上実施する場合 |
教育訓練休暇等付与コース | 企業が有給教育訓練休暇制度を導入したうえで、従業員が有給休暇を使って訓練を受けた場合 |
建設労働者認定訓練コース | 1. 職業能力開発促進法の認定訓練を実施した場合 (経費助成) 2. 職業能力開発促進法の認定訓練を有給で受講させる場合 (賃金助成) |
建設労働者技能実習コース | 1. 職業能力開発促進法の技能検定試験に向けた事前講習 2. 労働安全衛生法の教習・技能講習・特別教育 3. 建設業法の登録基幹技能者講習 など |
障害者職業能力開発コース | 1. 障害者職業能力開発訓練事業を行う場合 2. 障害者職業能力開発訓練事業に向けて、訓練施設、設備の設置・整備、更新を行う場合 |
人への投資促進コース | 1. 高度デジタル人材の育成訓練または大学院での訓練 2.OJTとOff-JTを組み合わせた IT分野の訓練 3. 従業員が自発的に受講し、費用を事業主が負担する場合 4. 労働と訓練の受講を両立するために長期休暇制度や短時間勤務等制度を導入した場合 5. 定額制訓練(サブスクリプション型研修サービス) |
事業展開等リスキリング支援コース | 1. 事業展開に向けて、新しい分野で必要な専門知識・技能の習得訓練 2. 企業内のデジタル化、DX(デジタルトランスフォーメーション)化、グリーン・カーボンニュートラル化を進める場合の関連業務で必要となる専門知識・技能の習得訓練 |
各コースには更に詳細な条件もあるため、該当するコースの目星がついたら、以下の厚生労働省による案内をご確認ください。
人材育成支援コース(令和5年度版パンフレット)
教育訓練休暇等付与コース(令和5年度版パンフレット)
建設労働者認定訓練コースの詳細
建設労働者技能実習コースの詳細
障害者職業能力開発コースの詳細
人への投資促進コース(令和5年度版パンフレット)
事業展開等リスキリング支援コース(令和5年度版パンフレット)
4. 人材開発支援助成金の申請から助成までの流れ|注意点も解説
人材開発支援助成金には基本的な支給申請手続きの流れがありますが、詳細はコースによって異なります。
基本的な申請の流れは、以下のとおりです。
- 企業が従業員の訓練計画を作成し、訓練実施の1ヶ月前までに管轄労働局に提出する
- 提出した訓練計画書に則り、訓練を行う
- 従業員の訓練が終了した日から2ヶ月以内に、支給申請を管轄労働局へ提出する
- 審査に通過し支給決定通知書が到着すると、2週間程度で助成金が支給される
訓練計画を提出するには、企業内で職業能力開発推進者を選任し、人材育成の基本方針を記した事業内職業能力開発計画の制定ならびに周知が必要です。
そのほか、申請の際には以下3つの注意点を押さえておきましょう。
- 助成金の支給は訓練終了後である
- 対象の訓練であっても、支給要件を詳細まで確認する必要がある
- 申請手続きにはコース別に提出期限がある
人材開発支援助成金の対象の訓練であっても、訓練の実施時間や人数、従業員の雇用形態・年齢など、支給条件が細かく定められています。
また、申請には必要な書類や資料が多数あり、時間と手間がかかるうえ、提出期限があります。
申請をする際には、支給要件・提出書類・提出期限を事前に確認し、漏れがないよう注意が必要です。
問題なく審査を通過するために、専門家への相談も検討しましょう。
なお、人材開発支援助成金は、雇用関係助成金ポータルからの電子申請も可能です。(有期実習型訓練の派遣活用型は対象外)
雇用関係助成金ポータルを利用するためには、事前にgBizIDの取得が必要となります。
gBizIDの取得に関しては、以下の記事でご紹介しています。
GビズIDとは?アカウントの登録方法からできることまで分かりやすく解説!
【より便利に】gBizIDがリニューアル!基本~新しくなった内容を紹介
人材開発支援助成金に必要な申請書類や、電子申請についての詳細は、以下の厚生労働省ホームページをご確認ください。
人材開発支援助成金|厚生労働省
5. 従業員のスキルアップに人材開発支援助成金を活用して生産性を向上させよう!
企業の生産性向上のために、従業員に必要な能力取得を効果的に進めたいなら、人材開発支援助成金の利用が一助となるでしょう。
助成金を利用すれば、優秀な人材の確保や企業成長が期待できます。
合同会社SCSでは、企業が利用できるさまざまな補助金についての選定や申請をサポートしておりますので、お気軽にご相談ください。
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