ものづくり補助金は、新製品やサービス開発、生産性向上に向けての設備を導入する際、ぜひ活用したい補助金の1つです。
創業間もない会社や個人事業主も含め、すべての業種が補助対象で、申請しやすい点も魅力です。
新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、近年の社会情勢はIT化やデジタル化へと急速に舵を切っています。
デジタル庁の創設やテレワーク推進、人手不足を補うためのロボット開発など、企業の生産性向上のためにもIT化、デジタル化はもはや必須事項となりつつあります。
そんな中、ものづくり補助金の活用を検討している事業者も多いのではないでしょうか。
この記事では、ものづくり補助金において、2023年度に拡充された変更点や採択率アップのコツなどをわかりやすく解説いたします。
目次
1.ものづくり補助金の概要
ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、革新的製品や新サービスの開発、生産性向上の改善に必要な設備投資を支援する補助金です。
2023年度は、大幅な賃上げに取り組む事業者に対し補助上限額を最大1,000万円引き上げるとともに、海外でのブランド確立などの取り組みへの支援が強化されます。
2023年度の申請枠は、下記5つです。
- 通常枠
- 回復型賃上げ・雇用拡大枠
- デジタル枠
- グリーン枠
- グローバル市場開拓枠
また、ものづくり補助金の基本要件は、次の通りです。
- 事業者全体の付加価値額※1を年率平均で3%以上増加させること
- 給与支給総額※2を年率平均で1.5%以上増加させること
- 事業場内最低賃金を地域別最低賃金よりプラス30円以上の水準にすること
※1 付加価値額とは、営業利益・人件費・減価償却費を足したもの。
※2 給与支給総額とは、非常勤を含む全従業員および役員に支払った給与など(給料、賃金、賞与および役員報酬などは含み、福利厚生費、法定福利費や退職金は除く)。
ただし、申請後に申請要件が未達と判断された場合には、支給された補助金の返還が求められるため、注意しましょう。
返還規程の内容は、下記の通りです。
- 給与支給総額の増加目標が未達の場合
- 事業場内最低賃金の増加目標が未達の場合
2.ものづくり補助金2023年度の対象者・対象経費
ものづくり補助金では、日本国内に本社および補助事業場を保有する中小企業や組合、特定非営利活動法人、社会福祉法人などが補助対象事業者です。
対象業種は幅広く設定されており、業種ごとに資本金や常勤従業員数が補助金の対象基準として定められています。
2-1.補助対象事業者
業種 | 資本金 | 常勤従業員数 |
---|---|---|
製造業、建設業、運輸業、旅行業 | 3億円 | 300人 |
卸売業 | 1億円 | 100人 |
サービス業 (ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) |
5,000万円 | 100人 |
小売業 | 5,000万円 | 50人 |
ゴム製品製造業 (自動車または航空機用タイヤおよびチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く) |
3億円 | 900人 |
ソフトウェア業または情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
その他の業種(上記以外) | 3億円 | 300人 |
組合や特定非営利活動法人、社会福祉法人などについては、公募要領をご覧ください。
2-2.補助対象外事業者
応募締切日前10か月以内にものづくり補助金の交付決定を受けた事業者や、過去3年間に2回以上類似の補助金※の交付決定を受けた事業者は、補助対象外となります。
※令和元年度補正・令和2年度補正・令和3年度補正ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業
そのほかの詳しい要件については、公募要領をご確認ください。
2-3.補助対象経費
ものづくり補助金の補助対象経費には、次のようなものがあります。
- 機械装置・システム構築費
- 運搬費
- 技術導入費
- 知的財産権等関連経費
- 外注費
- 専門家経費
- クラウドサービス利用費
- 原材料費
- 海外旅費(グローバル市場開拓枠のみ対象)
- 通訳・翻訳費(グローバル市場開拓枠のうち海外市場開拓(JAPANブランド)類型のみ対象)
- 広告宣伝・販売促進費(グローバル市場開拓枠のうち海外市場開拓(JAPANブランド)類型のみ対象)
3.ものづくり補助金2023年度の見直し・拡充5つのポイント
ものづくり補助金は、14次公募から5つの見直しや拡充が行われ、事業主にとってより使いやすくなりました。
どんな見直しが行われたのか、見ていきましょう。
3-1.大幅な賃上げには補助上限額を最大1,000万円上乗せ【特例】
「成長と分配の好循環」をより強力に推進するため、大幅な賃上げに取り組む事業者については、「回復型賃上げ・雇用拡大枠」を除くどの申請枠でも、一律で補助上限額が引き上げられます。
最大で1,000万円の上乗せとなり、活用を検討している事業主にとっては、とても大きな支援となるのではないでしょうか。
上乗せされる補助上限額は、従業員数によって異なります。
従業員数による上乗せ補助上限額
- 5人以下:100万円
- 6~20人:250万円
- 21人以上:1,000万円
3-2.グリーン枠の申請類型が3段階に拡充
令和3年度補正予算からグリーン枠「スタンダード型」が創設されました。
14次公募以降は、申請類型が「エントリー型」「スタンダード型」「アドバンス型」の3段階に拡充され、より事業規模にあった類型で申請できるようになりました。
既存のスタンダード型のほかに、簡単な取り組みで申請可能なエントリー型、より厳しい条件が課せられたアドバンズ型が追加となります。
類型の追加に合わせ、補助上限額も見直しが行われました。
温室効果ガス排出削減の取り組みに応じて、支援額も以下の3段階に変更されています。
- エントリー型:750~1,250万円以内
- スタンダード型:1,000~2,000万円以内
- アドバンス型:2,000~4,000万円以内
13次公募までの補助上限額は2,000万円以内でしたが、拡充後の「アドバンス型」では最大4,000万円以内と支給額が大幅にアップし、支援が拡大しました。
3-3.海外展開支援の内容が拡充・強化
海外事業の拡大・強化を支援するグローバル展開型は、「グローバル市場開拓枠」に名称を変更し、支援内容も大幅に拡充されています。
補助下限額が1,000万円から100万円に引き下げられ、小規模設備やシステム投資も補助対象となりました。
そのため、小規模事業者でも取り組みやすくなり、使い勝手が大幅に向上しています。
また、上記以外の補助対象経費も強化され、下記の費用が追加となりました。
- ブランディングやプロモーションなどに要する関連費用
ただし、この費用は、グローバル市場開拓枠の「海外市場開拓(JAPAN ブランド)類型」のみ対象です。
3-4.認定機器・システム導入型の新設【2024年以降】
2024年以降、「認定機器・システム導入型」が新設されます。
それぞれの業界の課題を解決するため、まず課題を認定し、解決のためのツールやシステムを承認することで、その導入にかかる補助を強化する仕組みです。
課題の提案から機器やシステムの導入まで、すべての工程を一連の事業として実施します。
以下3ステップが一連の流れです。
1.課題の認定
業界団体・小規模事業者含むすべての企業から課題を提案。その後、審議を経て、機械装置やシステムなど支援すべき課題を認定します。
2.課題解決策の開発
ステップ1で認定した課題解決のための機械装置やシステムをメーカー自身が開発します。導入支援によるメーカーの自主的開発を促すことが目的です。
3.機器等認定・導入支援
ステップ1で認定した機械装置やシステムについて、中小企業による導入を特別型により重点的に支援(上限引上げおよび優先採択を実施)。
補助額および補助率については次の通りで、補助額は従業員数によって異なります。
補助額
《従業員数》
- 5人以下:1,000万円
- 6~20人:1,500万円
- 21人以上:2,000万円
補助率
共通して中小企業は1/2(小規模事業者および再生事業者は2/3)
3-5.ビジネスモデル構築型の廃止
中小企業のイノベーション促進を支援するために創設された「ビジネスモデル構築型」は、2023年度以降廃止されます。
4.ものづくり補助金2023年度の申請枠
2023年度のものづくり補助金では、企業の経営革新における設備投資などを支えるべく、さまざまな用途をサポートできるよう、5つの申請枠を用意しています。
各枠の要件や補助額について解説していきますので、自社の補助事業の経営計画に合った枠を選択しましょう。
4-1.通常枠
新製品・新サービス開発・生産プロセスの改善に必要な設備投資および試作開発を支援するのが、通常枠です。
補助金額は常勤の従業員数によって異なります。
補助額
《従業員数》
- 5人以下:100~750万円(大幅賃上げ実施:最大850万円)
- 6~20人:100~1,000万円(大幅賃上げ実施:最大2,000万円)
- 21人以上:100~1,250万円(大幅賃上げ実施:最大2,250万円)
補助率
中小企業は1/2(小規模事業者および再生事業者は2/3)
4-2.回復型賃上げ・雇用拡大枠
回復型賃上げ・雇用拡大枠では、業況が厳しい事業者が賃上げや雇用拡大に取り組むために必要な設備・システム投資に対する補助を行います。
製品・サービス開発または生産プロセス向上、サービス提供方法の改善など、企業のイノベーション促進を支援する仕組みです。
この枠は、従業員に対する賃上げなどを前提とした優遇制度であるため、事業場内の最低賃金をアップさせることが条件です。
回復型賃上げ・雇用拡大枠の申請では、賃金アップなどの基本要件に加えて、追加要件を満たす必要があります。
基本要件・追加要件については、公募要領をご参照ください。
補助金額については、通常枠と同様、常勤の従業員数によって異なります。
補助額
《従業員数》
- 5人以下:100~750万円
- 6~20人:100~1,000万円
- 21人以上:100~1,250万円
補助率
2/3
4-3.デジタル枠
DX化のための革新的な製品・サービス開発、または生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備やシステム投資を支援するのが、デジタル枠です。
補助金額は下記の通り、常勤の従業員数によって異なります。
補助額
《従業員数》
- 5人以下:100~750万円(大幅賃上げ実施:最大850万円)
- 6~20人:100~1,000万円(大幅賃上げ実施:最大2,000万円)
- 21人以上:100~1,250万円(大幅賃上げ実施:最大2,250万円)
補助率
2/3
デジタル枠では、基本要件に加えて細かい追加要件があるため、公募要領をご確認ください。
4-4.グリーン枠
温室効果ガスの排出削減のための取り組みを行い、炭素生産性向上にともなう必要な設備やシステム投資などの支援が欲しい場合は、グリーン枠を申請しましょう。
取り組みの段階に応じ3段階の補助上限額が設定されており、それぞれの類型によって申請要件が次のように分かれています。
エントリー型
初歩的な取り組みでも申請可能
スタンダード型
バイオマス素材への変更などGHG※1排出削減に係る高度な取り組みを実施することが必要
アドバンス型
スタンダード型の要件に加え、省エネ法の定期報告でS評価取得、過去3年以内に省エネ診断を受診していること、またはGXリーグ※2に参加していることが条件
※1 GHGとは、Green House Gasの略称で、二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスの排出量のこと。
※2 GXリーグとは、GX(グリーントランスフォーメーション)に取り組む企業が一体となり、経済社会を変革するために議論したり市場を創造したりする場のこと。
補助上限額は、類型ごとに異なります。
補助額
◇ エントリー型 ◇
《従業員数》
- 5人以下:100~750万円(大幅賃上げ実施:850万円)
- 6~20人:100~1,000万円(大幅賃上げ実施:2,000万円)
- 21人以上:100~1,250万円(大幅賃上げ実施:2,250万円)
◇ スタンダード型 ◇
《従業員数》
- 5人以下:750~1,000万円(大幅賃上げ実施:2,000万円)
- 6~20人:1,000~1,500万円(大幅賃上げ実施:2,500万円)
- 21人以上:1,250~2,000万円(大幅賃上げ実施:3,000万円)
◇ アドバンス型 ◇
《従業員数》
- 5人以下:1,000~2,000万円(大幅賃上げ実施:3,000万円)
- 6~20人:1,500~3,000万円(大幅賃上げ実施:4,000万円)
- 21人以上:2,000~4,000万円(大幅賃上げ実施:5,000万円)
補助率
2/3
グリーン枠については、機械装置の撤去費用についても補助対象経費となるため、撤去したい装置がある場合には、ぜひ検討してみましょう。
4-5.グローバル市場開拓枠
グローバル市場開拓枠は、海外事業の拡大・強化を目的とした製品開発やサービス提供方法の改善に必要な、設備・システム投資を支援する類型です。
申請類型は、海外展開の手法により、以下4つに分けられます。
- 海外直接投資類型
- 海外市場開拓(JAPAN ブランド)類型
- インバウンド市場開拓類型
- 海外事業者との共同事業類型
自社の事業の特性から、最も適した類型を選択しましょう。
補助上限額は、最大3,000万と大型の補助枠です。
補助額
100~3,000万円(大幅賃上げ実施:4,000万円)
補助率
中小企業は1/2(小規模事業者は2/3)
海外事業展開を目的としていることから、海外旅費も補助対象経費です。
グローバル市場開拓枠以外の枠では、補助事業実施期間が10か月以内の指定となっていますが、この枠ではグローバル展開の特性から、12か月以内とほかの枠よりも長い実施期間が設定されています。
そのほか、各類型の追加要件については、公募要領をご参照ください。
5.ものづくり補助金2023年度の採択率アップ3つのコツ
2023年度のものづくり補助金で採択を受けたいと考えている事業者に向けて、採択率がアップする3つのコツをお伝えします。
「早めの申請」など取り入れやすいものもあるので、ぜひ実践してみてください。
5-1.【コツ1】事業計画書の策定は専門家に相談
補助金を申請する際は、事業計画書の提出が求められます。
ここでのコツは、事業計画書を含む申請資料の作成時に、専門家のサポートを受けることです。
採択の審査に通るかどうかは、提出書類のクオリティによって大きく左右されるためです。
下記のグラフでは、専門家を通して質のよい資料を作成したほうが、採択率がアップしていることがわかります。
出典:ものづくり補助金のポータルサイト『支援者の関与(補助金に対する報酬の比率)』
専門家の「支援あり」の場合の最高採択率は68.7%と、高い水準を保持しています。
反対に、「支援なし」の場合の採択率は44.8%と、一番低い数値です。
そのため、事業計画書を策定するときは、専門家に相談して進めるのが効果的です。
補助金活用支援合同会社でもご相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
5-2.【コツ2】申請のタイミング
補助金を申請するには、書類の準備や事業実施計画の策定など、やるべきことが多くあります。
余裕をもって取り組まず受付期間ギリギリに粗削りなまま申請する事業者もいますが、これでは審査を通過できない場合もあるでしょう。
上記のグラフを見ると、締切日当日に申請する事業者が一番多いことがわかりますが、採択率を見ると55.3%とあまり高い数値ではありません。
その一方で、締切日6日前の申請者数は約3%と少ないですが、採択率に関しては66.0%と一番高い数値です。
やはり、前もって余裕のあるスケジュールを組んでおくことが望ましいといえるでしょう。
5-3.【コツ3】加点項目の取得
ものづくり補助金では、加点項目を多く取得すると採択率がアップします。
加点項目は、エビデンスとなる添付書類が各要件に合致していた場合、加点される仕組みです。
2023年度の加点項目は大きく分けて、主に次の4つです。
- 成長性加点
- 政策加点
- 災害等加点
- 賃上げ加点等
各項目の中にさらに細かい加点項目があるため、詳しい加点内容については「公募要領 概要版」をご覧ください。
では、ものづくり補助金のポータルサイトの『加点項目の数』のグラフを見てみましょう。
グラフを見ると、4つ加点を取得した場合、86.7%とかなり高い採択率を誇っています。
2つの加点項目を満たすと半数以上の採択率になっているため、最低でも2つ以上は取得しておくのがおすすめです。
自社が加点項目を取得できるかどうかお悩みの場合は、補助金活用支援合同会社にご相談ください。
6.ものづくり補助金2023年度のスケジュール
14次締切の公募はすでに開始されており、申請受付や応募締切は、下記の通りです。
《14次締切のスケジュール》
- 公募開始:2023年1月11日(水)17時~
- 申請受付:2023年3月24日(金)17時~
- 応募締切:2023年4月19日(水)17時
ものづくり補助金は、15次以降も2024年にかけて切れ目なく事業を実施する予定です。
今後のスケジュールについては、下記をご参照ください。
出典:ものづくり・商業・サービス補助金|令和4年度2次補正予算関連1.0版
7.ものづくり補助金2023年度の申請の流れ
2023年度のものづくり補助金の申請から補助金の交付までは、下記の図のように進みます。
申請には「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要です。
アカウントの発行には約2週間かかる場合があるため、早めの取得がおすすめです。
8.2023年度のものづくり補助金は大幅賃上げで使い勝手も向上!
2023年度のものづくり補助金は、大幅賃上げによる補助上限額1,000万円のインセンティブや、海外事業の拡大・強化の支援においては下限額が100万円に引き下げられるなど、使い勝手が大幅に向上しています。
ものづくり補助金は、企業規模を問わず幅広い事業者が対象となるうえ、生産性向上につながるツールやシステムの導入に対して、手広く支援が届く点が特徴です。
審査の際には、採択率をアップさせるための事業計画書の策定など、補助金活用支援合同会社が御社の力になれる部分があります。
一緒に採択を目指して、歩んでいければと思いますので、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。
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