企業の創業時や新たな取り組みを行うとき、資金調達方法として「金融機関からの融資」を選択する人も少なくありません。
金融機関はそれぞれ、設立目的や根拠法などによっていくつかの種類に分類されているため、タイミングや目的に合わせて選ぶことが大切です。
今回は、中小企業者が利用できる金融機関の種類から金融機関の使い分け方法までをわかりやすく解説します。
目次
1.金融機関とは?
金融機関とは、資金を必要とする者と資金を貸す余裕のある者の間に立ち、資金の融通を仲介する機関のことです。
設立目的や根拠法により、以下の6つに分類されています。
・政府系金融機関
・銀行
・中小企業金融機関
・ノンバンク
・農林水産金融機関
・その他
金融機関には「統一金融機関コード」というコードが振り分けられており、このコードで日本国内に数多くある金融機関の分類と整理が行われています。
2.金融機関の種類
ここからは中小企業者が利用することの多い金融機関を中心に解説します。
2-1.政府系金融機関
政府系金融機関とは、政府が多くの出資金を出している金融機関の総称です。
国民生活の安定や経済発展を目的として設立されました。
金融機関名 | 概要 |
日本政策金融公庫 | 政策金融改革の1つとして設立。
中小企業の支援を通じて日本経済の発展を目指している。 |
日本政策投資銀行 | 株式会社日本政策投資銀行法に基づき設立。
資金供給の円滑化や金融機能の高度化を目指している。 |
国際協力銀行 | 日本政府が全額出資している特殊銀行。
海外の資源開発や国産業の向上などを目的としている。 |
商工組合中央金庫 | 中小企業のための金融機関。
中小企業への支援を通じた地域経済活性が目的。 |
沖縄振興開発金融公庫 | 沖縄県のみが対象の金融機関。
地域資源を活用した観光関連事業者を支援している。 |
政府系金融機関のなかでも「日本政策金融公庫」は、支援制度の活用によって特別金利での融資を受けることができる金融機関としても有名です。
2-2.銀行
銀行とは、資金の貸し出しや為替取引などを主に取り扱っている金融機関のことです。
国民経済の健全な発展を目的として設立されました。
銀行は、「都市銀行」「地方銀行」「第二地方銀行」の3つに区分されています。
種類 | 特徴 |
都市銀行 | 全国各地に展開している銀行。
本店は大都市にあり、大企業への融資や国際的な取引も行われている。 |
地方銀行 | 都道府県に本店のある地域密着型の銀行。
地域の中堅・中小企業や個人を対象とした取引を行っている。 |
第二地方銀行 | 地方銀行よりも規模の小さな地域密着型の銀行。
一部の都道府県では設置されていないため数が少ない。 |
また近年では、店舗を最小限にし、預金通帳などを廃止したインターネット上で管理できる「ネット銀行」も増えてきています。
ネット銀行は低コストでの運営が行われており、ほかの銀行と比較すると「預金金利は高く・各種手数料は低い」傾向があります。
2-3.中小企業金融機関
中小企業金融機関とは、中小企業へ向けて経済・金融の円滑化を目的に設立された金融機関です。
「信用金庫」や「信用組合」が中小企業金融機関として有名です。
信用金庫と信用組合は同じ協同組織ですが、金融機関としては下記のような違いがあります。
金融機関名 | 根拠法 | 主な取引相手 |
信用金庫 | 信用金庫法 | 預金:中小企業者や個人
融資:原則会員のみ |
信用組合 | 中小企業等協同組合法 | 預金:原則組合員のみ
融資:原則組合員のみ |
なお、融資に関してはどちらも「原則会員(組合員)のみ」となっていますが、一部例外として会員(組合員)以外への融資を取り扱っている場合もあります。
2-3-1.銀行との違い
中小企業金融機関と銀行は同様の業務を行っていますが、設立の目的や根拠法が異なります。
金融機関名 | 根拠法 | 目的 |
中小企業金融機関 | ・信用金庫法
・中小企業等協同組合法 など |
・金融の円滑化、貯蓄の増強
・組合員の相互扶助 ・組合員の経済的地位の向上 |
銀行 | ・銀行法 | ・国民経済の健全な発展 |
また、中小企業金融機関は地域住民が組合員(会員)となっていることもあり、金融機関のなかでも特に地域への密着度が高い傾向があります。
2-4.ノンバンク
ノンバンクとは、融資のみを取り扱っている金融機関の総称です。
金融機関や事業金融、リース会社などが該当します。
・連帯保証付き融資
・不動産などを担保とした担保型融資
・手形割引
・カードローン
ノンバンクはほかの金融機関と比べて金利が高いため、借入を行う際には税理士などの専門家へ相談を行ったうえで「借入総額の10%以内」に抑えるとよいでしょう。
2-5.農林水産金融機関
農林水産金融機関とは、事業に特化した金融機関のことです。
代表的なものには、農業協同組合(JA)や漁業協同組合(JF)があります。
・漁業協同組合:水産資源を守り育てながら漁業生産活動を行う漁業者によって設立
どちらも協同組合員から預かった貯金などを融資の原資としているため、原則として協同組合員以外への融資は取り扱っていません。
2-6.その他
上記分類に該当しない「その他」金融機関について解説します。
その他に分類されている金融機関の多くは「一般向け」であり、企業は融資を受けることができません。
しかし、契約者本人への貸付制度や法人への融資を取り扱っている場合もあるので、資金調達手段の1つとして知っておくとよいでしょう。
2-6-1.ゆうちょ銀行
ゆうちょ銀行は、2007年10月に行われた郵政民営化関連法により設立された金融機関です。
郵便や物流、金融窓口、銀行、生命保険商品などを日本全国で取り扱っています。
現在は事業者向けの貸付業務(融資)は取り扱われていませんが、法人向けの口座開設や入金事務などの支援が行われています。
2-6-2.労働金庫
労働金庫とは、労働組合や生活協同組合などの会員が出資・運営を行っている金融機関です。
預金の受け入れや融資・ローン、手形の発行などを主に取り扱っています。
中小事業者向けの金融機関ではありませんが、NPO法人向けの融資は行われています。
2-6-3.福祉医療機構
福祉医療機構は、福祉の増進や医療普及を目的として設立された独立行政法人です。
病院や診療所、老健施設などへの貸付業務を取り扱っています。
2-6-4.保険会社
保険会社とは、生命保険や損害保険を商品として取り扱う企業のことです。
中小企業などの一般事業者向けの貸付業務は行われていません。
契約内容によっては「契約者貸付制度」を利用して、一定の範囲内での借入が可能です。
契約者貸付制度が行われていない保険もあるので、利用を検討する際は保険の契約内容を確認しましょう。
3.金融機関はどう使い分ける?
金融機関にはさまざまな種類がありますが、事業者はどのように使い分けていけばよいのでしょう。
ここからは「創業時」「創業後」の事業段階に応じた金融機関の使い分けを解説します。
3-1.創業時
中小企業者が創業時の借入・融資の候補先として多く選ばれているのは「日本政策金融公庫」「信用金庫」「信用組合」です。
銀行からの借入・融資を受ける場合には、企業の「業務実績」が必要となりますが、これから創業をする企業には業務実績がありません。
しかし、日本政策金融公庫や信用金庫、信用組合では、創業する企業向けの融資があるほか、信用保証会社からの保証を受けることで融資が受けられる可能性が高くなります。
また、事業用に新たに口座開設を行う場合には、大きな金額の取り扱いに長けた都市銀行や大手の地方銀行が選ばれています。
地域に根差した事業展開を考えている場合には、地域特有の融資や支援を行っている信用金庫や信用組合の利用がおすすめです。
3-2.創業後
創業後、資金が必要になる日までに余裕がある場合には「日本政策金融公庫」や「信用金庫」、「信用組合」からの借入をメインとする事業者が多く見られます。
事業規模の拡大や収益の増加に応じて、都市銀行や大手地方銀行などの規模の大きな金融機関の利用を検討するとよいでしょう。
創業後の資金調達方法については、下記の記事でも詳しく紹介しています。
【合同会社SCS│【事業主必見】資金調達の方法12選を紹介!審査で見られるポイントとは?】
4.企業状況にあった金融機関の利用方法を選ぼう!
金融機関とは、融資を受けたい人と資金に余裕のある人を仲介し、円滑な資金の融通を行う機関のことです。
設立目的や根拠法によって6つの種類に分かれており、それぞれで融資対象者や条件が異なります。
実際に金融機関を利用する際には、資金が必要な理由や企業状況に照らし合わせて、自社にあった金融機関を選択しましょう。
新しく事業を行う場合や事業転換を行うための資金が必要な場合には、補助金や助成金などの支援制度の活用もおすすめです。
合同会社SCSでは、新しい事業にチャレンジする企業や企業継続のための取り組みを行う企業への補助金申請サポートを行っています。
補助金活用に興味のある方は、ぜひ一度当社へお問い合わせください。
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