「えるぼし認定」とは、厚生労働省から「女性活躍推進に取り組む優良企業である」と認定を受けることで、企業価値の向上や各種支援制度での優遇が受けられる認定制度のことです。
今回は「えるぼし認定」についての概要や認定を受けることで得られるメリット、「くるみん認定」との違いについて徹底解説します。
誰でも働きやすい職場づくりに取り組む企業の方はぜひご覧ください。
目次
1.えるぼし認定の概要
女性活躍推進に取り組む優良企業と認定されることで、さまざまな優遇措置を受けることができる「えるぼし認定」。
まずは、えるぼし認定制度の概要、なぜ制定されることになったのか、また「くるみん認定」との違いについて解説します。
1-1.概要
えるぼし認定は、女性活躍推進法に基づき行われている「女性の活躍推進に取り組む企業を厚生労働大臣が認定する制度」です。
認定を受けるためには、一般事業主行動計画の策定・届出を行ったうえで、女性活躍推進への取り組みが優良かどうかなどの要件を満たす必要があります。
また、認定後でも、さらに高い水準の取り組みを行っている企業は「プラチナえるぼし」として認定を受けられ、一般事業主行動計画の策定・届出が免除されます。
【参考│厚生労働省:えるぼし認定、プラチナえるぼし認定の概要】
1-2.制定の背景
えるぼし認定が制定された背景には、少子高齢化に伴う人材不足や、多様性のある人材の確保が不可欠である日本の現状があります。
2016年4月に働く女性の労働環境整備、労働力不足の減少を補うことを目的とした「女性活躍推進法」が施行されました。
この法律は2025年までの時限立法であるにもかかわらず、施行日から2度の改定が行われているほど重要視されています。
えるぼし認定は、女性活躍推進法に基づき、女性が仕事の能力を十分に発揮し、活躍できる環境を整備するために制定されました。
【参考│厚生労働省:女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定)】
1-3.くるみん認定との違い
えるぼし認定と混同されやすい「くるみん認定」ですが、それぞれ基づく法律と制度の目的に違いがあります。
えるぼし認定は、女性活躍推進法に基づき、働く女性が能力を十分に発揮できる労働環境の整備を目的として実施されている制度です。
これに対してくるみん認定は、次世代育成支援対策推進法に基づき実施されている制度で、仕事と育児が両立できる職場づくりを目的としています。
くるみん認定は、えるぼし認定同様に認定を受けることができれば、さまざまな優遇措置を受けることができる制度です。
くるみん認定については、下記の記事で詳しく紹介しているので、合わせてご覧ください。
【合同会社SCS│くるみん認定とは?認定を受けることで得られるメリットや申請方法を解説!】
2.えるぼし認定の認定段階とロゴマーク
えるぼし認定では、どのような取り組みを行うかによって認定後に与えられるロゴマークが異なります。
認定段階とロゴマーク | 概要 |
プラチナえるぼし | えるぼし認定を受けた企業のうち、特に優良であると認められた企業に与えられるロゴマーク |
えるぼし
(3段階目) |
認定基準すべてを満たしている企業に与えられるロゴマーク |
えるぼし
(2段階目) |
認定基準を3~4つを満たしている企業に与えられるロゴマーク |
えるぼし
(1段階目) |
認定基準を1~2つを満たしている企業に与えられるロゴマーク |
【参考│厚生労働省:えるぼし認定、プラチナえるぼし認定の概要】
認定ロゴマークは、「L」がデザインされた円の上に星が輝くデザインとなっており、企業や社会で活躍し、星のように輝く女性へのエールがこめられています。
3えるぼし認定を受ける3つのメリット
えるぼし認定を受けた企業は3つのメリットを得られます。
ここからは、認定企業が得られるメリットについて詳しく解説します。
3-1.えるぼし認定ロゴマークを利用できる
えるぼし認定を受けると、認定段階に応じた認定ロゴマークが利用できるようになります。
認定ロゴマークは、企業公式サイトや企業の広告などへ使用できるため、社外に「女性が活躍できる企業である」ことをアピールすることが可能です。
男女差別のない評価が行われている企業で働きたいと考える人にとって、このような取り組みを行う企業であることは大きなメリットとなり、優秀な人材獲得への効果も期待できます。
3-2.えるぼし認定と同時にSDGs目標も達成できる
SDGsとは、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すための国際目標のことです。
えるぼし認定を受けた企業は、下記のSDGs目標を達成できます。
世界的な課題であるSDGsの達成に向けて貢献することは、「社会的責任を果たせる企業である」ことのアピールにつながり、企業の信頼向上が期待できます。
3-3.公共調達や支援制度で優遇を受けられる
各省庁が公共調達を実施するときに、えるぼし認定企業を加点評価する仕組みが導入されています。
加点評価を受けると、公共調達が有利になる場合があります。
総配点に占める割合や配点例などの詳しい情報は、下記のリーフレットをご覧ください。
【厚生労働省│制度の概要(リーフレット)】
また、日本政策金融公庫による融資の1つ「働き方改革推進支援資金」を特別利率で利用することができます。
【日本政策金融公庫│働き方改革推進支援資金】
4.えるぼし認定は補助金の加点項目の1つ!
えるぼし認定は主要補助金と呼ばれる5つの補助金で、加点項目の1つとして扱われています。
えるぼし認定を加点項目として扱う補助金一覧 | ||
補助金名 | 概要 | 公式サイト |
事業再構築補助金 | 事業転換、業種転換などの事業再構築を行う中小企業を支援する補助金 | 事業再構築補助金 |
ものづくり補助金 | 革新的なサービスの開発や生産プロセスの改善などに取り組む中小企業・小規模事業者を支援する補助金 | ものづくり補助金総合サイト |
IT導入補助金 | 業務効率化や生産性向上のためにITツールを導入する中小企業・小規模事業者を支援する補助金 | IT導入補助金2024 |
小規模事業者持続化補助金 | 生産性の向上、持続的な発展を目指す小規模事業者を支援する補助金 | 商工会地区 |
事業承継・引継ぎ補助金 | 事業承継を機に経営革新などを行う中小企業・小規模事業者を支援する補助金 | 事業承継・引継ぎ補助金 |
加点項目を満たしていると、補助金の採択審査時に有利となるため、採択率のアップにつながるというメリットがあります。
補助金はさまざまな場面で活用することができるので、興味のある方は合同会社SCSへお気軽にお問い合わせください。
【合同会社SCS│お問い合わせフォーム】
5.えるぼし認定の認定基準
認定を受けることで、さまざまなメリットが得られるえるぼし認定。
ここからは、認定を受けるために満たさなければならない認定基準について解説します。
なお、プラチナえるぼし認定を目指す際にも、ここでご紹介する認定基準を満たす必要があるのでご確認ください。
5-1.採用
えるぼし認定を受けるためには、採用面で下記のいずれかを満たす必要があります。
または
②直近の事業年度において(i)(ii)の両方に該当すること
(i)正社員に占める女性労働者の割合が産業平均値以上
(ii)正社員の雇用管理区分における女性労働者の割合が産業平均値以上
【参考│厚生労働省:えるぼし認定、プラチナえるぼし認定の概要】
労働者の割合の計算方法や産業平均値について、詳しくはパンフレットでご確認ください。
5-2.継続就業
現在企業で継続的に働いている労働者の男女比についても、基準が定められています。
(i)「女性労働者の平均勤続年数」÷「男性労働者の平均勤続年数」が雇用管理区分ごとに7割以上
(ii)「女性労働者の継続雇用割合」÷「男性労働者の継続雇用割合」が雇用管理区分ごとに8割以上
・上記を算出できない場合には、以下でも可。
直近事業年度において、正社員の女性労働者の兵器継続勤務年数が産業平均値以上である
【参考│厚生労働省:えるぼし認定、プラチナえるぼし認定の概要】
プラチナえるぼし認定を目指している場合には、上記の(i)で8割以上、(ii)で9割以上であることが求められます。
5-3.労働時間などの働き方
えるぼし認定を目指す企業は、労働者の労働時間などの働き方についても考えなければなりません。
働き方に関しては、以下の基準が定められています。
【引用│厚生労働省:えるぼし認定、プラチナえるぼし認定の概要】
雇用管理区分とは、職種や資格、雇用形態などにより従業員を区分けし、採用から退職までの一連の業務を管理することです。
詳しくは下記のページをご覧ください。
【厚生労働省│雇用管理区分のイメージ図】
5-4.管理職の比率
えるぼし認定では、管理職に就く女性労働者がどの程度いるか、男性労働者との比率がどうなっているかも認定の基準となっています。
管理職の比率に関する基準は以下の通りです。
又は
② 「直近3事業年度の平均した1つ下位の職階から課長級に昇進した女性労働者の割合」÷ 「直近3事業年度の平均した1つ下位の職階から課長級に昇進した男性労働者の割合」が 8割以上であること。”
【引用│厚生労働省:えるぼし認定、プラチナえるぼし認定の概要】
プラチナえるぼし認定を目指す場合には、管理職の比率に関する基準が異なります。
詳しくは、下記のページをご覧ください。
【厚生労働省│えるぼし、プラチナえるぼしの概要】
5-5.多様なキャリアコース
多様なキャリアコースを用意し、実施できているかもえるぼし認定の認定基準の1つです。
キャリアコースに関する認定基準は以下の通りです。
A 女性の非正社員から正社員への転換
B 女性労働者のキャリアアップに資する雇用管理区分間の転換
C 過去に在籍した女性の正社員としての再雇用
D おおむね30歳以上の女性の正社員としての採用”
【引用│厚生労働省:えるぼし認定、プラチナえるぼし認定の概要】
えるぼし認定では、さまざまな働き方が求められている社会に、企業がどのように対応しているかが重要です。
6.えるぼし認定の申請方法
ここからは、えるぼし認定の認定段階1~3に申請するための方法を解説します。
プラチナえるぼし認定の申請方法については下記のページをご覧ください。
【厚生労働省│女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定)】
6-1.一般事業主行動計画の届出と実行
まずは、一般事業主行動計画の策定・届出を行い、行動計画に基づく取り組みを実行します。
一般事業主行動計画は策定後3か月以内に、都道府県労働雇用環境・均等部(室)へ策定の届出をします。
一般事業主行動計画:自社の状況把握、課題分析結果をもとにどのような取り組みを行っていくかの計画。
行動計画には「計画期間」「数値目標」「取り組み内容」「取り組みの実施期間」を盛り込まなければならない。
また、不慮のトラブルなどで行動計画の内容を変更せざるを得ない場合には、届出を出すことで変更が可能です。
ただし、プラチナえるぼし認定を目指している場合には、行動計画の内容を下方修正することは認められていません。
女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の策定方法については、下記のリーフレットをご覧ください。
【厚生労働省│女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!】
6-2.女性の活躍推進企業データベースへ実績を公表する
一般事業主行動計画の策定・届出を行った後は、「女性の活躍推進企業データベース」で取り組み内容を公表します。
女性の活躍推進企業データベースは、厚生労働省が運営するポータルサイトでさまざまな企業が取り組む女性活躍への取り組みを確認することができます。
計画期間内であっても毎年1回以上は最新のデータに更新する必要があるため、計画がどのように進んでいるかを正確に把握しなければなりません。
また、一般事業主行動計画は一般の方だけでなく自社の労働者への公表も必要です。
事務所内での掲示や社内メールなどを活用して、社内全体で行動計画に関する情報を共有しましょう。
6-3.えるぼし認定の申請を行う
一般事業主行動計画の公表後、えるぼし認定の申請を行います。
申請には以下の書類が必要です。
・計画期間に申請年月日を含む一般事業主行動計画の写し
・行動計画の周知、公表を行った日にちがわかるもの
・一般事業主行動計画の実績を明らかにする書類
・関係法令順守状況報告書
【参考│女性活躍推進法に基づくえるぼし認定プラチナえるぼし認定のご案内】
このほかにも企業状況などに応じて書類の提出が求められることがあります。
申請は、郵送・持参・電子申請のいずれかの方法で行うことが可能です。
詳しくは、下記のページをご確認ください。
【厚生労働省│女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定)】
6-4.認定後も女性活躍推進に関する情報を公開する
認定を受けた後は、認定基準を満たしていない項目に関する取り組み状況をポータルサイト上で公開しなければなりません。
引き続き取り組みを行い、基準を満たした企業は「プラチナえるぼし認定」への申請が可能となります。
プラチナえるぼし認定は、女性活躍推進に対する取り組みが特に優良な企業である証であり、社外にアピールすることで企業の信頼度アップや企業価値の向上も期待できます。
ただし、えるぼし認定を受けたにも関わらず、情報の公開を2年間怠ったり認定基準から外れてしまったりした場合には認定の取り消し処分を受けることがあるため注意が必要です。
取り消し処分を受けてしまうとその後3年間えるぼし認定の申請ができなくなるので、認定を受けた後も継続して取り組みを行いましょう。
7.えるぼし認定を受けて「誰もが働きやすい企業」を目指そう!
えるぼし認定は、女性活躍推進法に基づき「女性が能力を発揮して活躍できる社会」を作ることを目的に実施されている制度です。
認定を受けることで、企業価値の向上も期待できるうえ、さまざまな支援を受けることが可能となります。
多様な働き方が求められている今だからこそ、えるぼし認定を受け「誰もが働きやすい企業」を目指しつつ優秀な人材確保に取り組んでみてみはいかがでしょうか。
えるぼし認定のほかにも、日本全国ではさまざまな支援制度や補助金が実施されています。
特に補助金はさまざまなシーンで活用できるため、まずは一度、合同会社SCSへお気軽にご相談ください。
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