請求書や納品書など取引先との大事な書類、社内でどのように保管しているでしょうか?
Excelなどでフォーマットを作成し、「紙」に印刷して保存している場合も多いのではないでしょうか。
2024年1月に施行される電子帳簿保存法の改正では、原則的に紙での保存は廃止されます。
代わりに、今後は電子データでの保存が必須となります。
「紙で受け取るレシートや領収書はどうなるの?」
「どのように対応を進めていけばよいかわからない」
経理担当者や事業主の方の中には、今後の経理業務に対しこのように不安を覚える方もいるのではないでしょうか。
この記事では、電子帳簿保存法において今後対応すべき請求書や領収書などの保存方法について、パターン別に解説していきます。
目次
1.【電子帳簿保存法の改正】電子取引データの書類はすべて電子保存での義務化が決定
https://www.photo-ac.com/main/detail/24956368
2022年1月から施行された電子帳簿保存法の改正により、電子取引による書類やデータのすべてを「電子保存」することが義務化されました。
企業規模に関係なく大企業から中小企業、小規模事業者はもちろん、個人事業主やフリーランス含む全事業者が対象です。
1-1.そもそも電子帳簿保存法とは?
電子帳簿保存法は、税金に関わる帳簿や請求書などの書類を電子データで保存することを認める法律です。
改正により要件が大幅に緩和され、経理業務の電子化が進めやすくなりました。
電子帳簿保存法の目的は、書類の整理やファイリングにおける手間の省略、保管スペースのコスト削減などを行うことで「ペーパーレス化の促進」を図ることです。
また、国税関係帳簿書類の保存にかかる事務負担の軽減、および利用者の利便性の向上を目指しています。
1-2.電子取引データの電子保存における猶予期間は2023年12月末日まで
電子帳簿保存法が改正されるまでは、電子取引データでの書類も、「紙保存」と「電子保存」どちらでもよいとされていました。
電子保存が義務化された今、企業は会計ソフトの更新や新規導入など、管理方法の見直しを迫られています。
しかし、新しい検索要件などに基づくシステム導入などの対応が間に合わないという事業者も多く、政府は2023年12月末日までの2年間を「宥恕(ゆうじょ)※措置」とし、この期間に対応を進めるよう企業に呼びかけています。
※本来はやらなければならないが、「許容」するという意味
完全に電子化へ移行するためには、システムの整備だけでなく運用面も含めて時間がかかるものです。
「まだまだ時間はある」と考えず、自社内での電子保存への対応を計画的に進めていきましょう。
1-3.猶予期間延長で紙での保存も容認?紙保存でいい場合とは?
2022年11月24日、2年間の猶予期間を延長する形で「紙での保存も容認する方針を政府が検討している」ことを日本経済新聞が報じました。
出典:日本経済新聞|請求書データ管理、対応遅れの企業は紙も容認 政府検討
税務署が「相当の理由」だと判断すれば、特例としてこれまで同様、紙での保存が認められる可能性があると発表されたのです。
相当の理由としては、次のような事例が考えられます。
- 資金面で会計ソフトの導入が難しい
- 人手不足
- とにかく忙しくて対応している時間がない
このように、かなり幅広い条件で「紙保存」が認められるのではないかと推測されています。
ただし、請求書などの電子データをパソコン上の専用フォルダに整理したうえで保存しておき、税務署などにいつでも提示できる状態での簡易保存が条件となる可能性があるようです。
紙保存の容認を受ける場合の事前申請などは現状必要ないとされていますが、紙保存の容認がどのくらいの期間続くかなどについては、まだまだ不透明な部分が多くなっています。
どちらにせよ、今後「電子保存」に完全移行していくことは避けられません。
政府の動きを注視しつつ、早めに電子化への対応を心がけましょう。
2.電子帳簿保存法の対象となる電子取引とは?
https://www.photo-ac.com/main/detail/994820
電子帳簿保存法における「電子取引」とは、見積書・請求書・領収書・納品書などの取引に関する証憑書類や情報を電子メールやクラウドサービスなどで授受する取引のことです。
USBなどでのデータの受け渡しも、中身が電子データであるため「電子取引」扱いとなります。
3.電子取引データの保存方法:電子帳簿保存における3つのパターン
https://www.photo-ac.com/main/detail/23407691
電子帳簿保存における保存方法としては、下記3パターンに分けられます。
- ①【帳簿・決算書】…紙保存か電子保存(任意)
- ②【紙で取引する請求書や領収書】…紙保存かスキャナ保存(任意)
- ③【電子データで取引する請求書や領収書】…電子保存のみ(電子保存が義務であり紙保存はNG)
では、それぞれのパターンについて見ていきましょう。
3-1.パターン1:帳簿・決算書(紙保存・電子保存)
会計ソフトを使用し自社で作成した帳簿や決算書については、「紙保存」「電子保存」どちらの保存方法でも問題ありません。
社内で管理しやすい方法で保存しましょう。
3-2.パターン2:紙で取引する請求書や領収書(紙保存・スキャナ保存)
紙で授受する請求書や領収書については、「紙保存」もしくは「スキャナ保存」で保存しましょう。
対象となるのは、たとえば以下のようなケースです。
- ①WordやExcelなどのOffice製品で作成した請求書を印刷・押印した後、クライアントに封筒で送り、控えとしてコピーを自社で保存する場合
- ②受け取った領収書、もしくは発行した領収書やレシートなどが紙の場合
①、②どちらの場合も、「スキャナ保存」でも「紙保存」でも問題ありません。
すべてを「スキャナ保存」するのは時間も手間もかかりますが、先を見据えて早めに電子化に対応できるようにしておきましょう。
ちなみに、「スキャナ保存」と「電子保存」の違いは、原本となる書類の取引が電子メールやクラウドサービスからのダウンロードなどの電子取引か否かです。
原本が紙の書類を電子化し保存したものが「スキャナ保存」、電子取引でやり取りした書類をパソコンに保存したものが「電子保存」です。
3-3.パターン3:電子データで取引する請求書や領収書(電子保存のみ)
電子帳簿保存法では、電子メールへの添付やクラウドサービスでの共有など、電子データで取り交わした請求書や領収書について、必ず「電子保存」することを義務付けています。
Amazonや楽天などのネットショッピングでの領収書や請求書もPDFなどの「電子保存」のみ有効で、紙に印刷しての保存は原則禁止です。
自営業や個人事業主で、今までインターネット上で仕入れた資材や商品、備品などの領収書を印刷して紙で保存していた場合は、早めに「電子保存」に切り替えましょう。
4.電子帳簿保存法の要件に則った電子取引データの管理方法とは?
https://www.photo-ac.com/main/detail/25549320
電子帳簿保存法の要件に則って電子取引データの書類を管理する際は、下記4点の管理条件を満たす必要があります。
- タイムスタンプの付与
- 改ざん・改変できないシステムの導入
- 事務処理規程の作成
- 検索機能の実装(年月日・金額・取引先をファイル名として明記)
タイムスタンプの付与や検索機能の実装を含め、それぞれの項目について解説していきます。
自社の管理方法は上記の条件をきちんと満たしているか、一度確認してみてください。
4-1.タイムスタンプの付与:真実性(原本性)の保証
タイムスタンプは、保存されている電子データが「改ざんされていない原本書類である」と、データの原本性を証明するための技術です。
PDFなどの電子データは複製・改ざんが容易にできてしまうため、電子保存する際には、タイムスタンプの付与が求められます。
タイムスタンプで時刻情報が付与されると、付与された時刻に電子データが存在していたこと、また付与時刻以降は電子データが変更されていないことの証明となり、真実性が確保できる仕組みです。
電子帳簿保存法に対応した会計ソフトやクラウドシステムで管理する場合は、データの訂正や削除を行った履歴が残るシステムであれば、タイムスタンプの付与は必要ありません。
タイムスタンプは、「最長2か月+7営業日以内」と付与期間が定められています。
4-2.改ざん・改変できないシステムの導入:可視性の整備
システムの導入にあたっては、データを改ざん・改変できないことはもちろん、削除や訂正記録が残るものを選ぶ必要があります。
また、可視性の整備として、電子データを表示するためのパソコン、ディスプレイ、スマホ、プリンタなどの機器を備え付けることが必須要件です。
上記の要件を満たさなければいけない主な理由は、次の通りです。
- 税務調査の際に、請求書などの証憑書類をパソコンのディスプレイで確認できること
- 必要とされる場合には、プリンタで速やかにデータを出力することができること
これらの要件を満たす設備が整っているか、今一度、事業所内を確認してみましょう。
4-3.適正事務処理規程の作成:安全性の確保
電子帳簿保存法を遵守するための手段として、「適正事務処理規程」を作成し、このルールに基づいて電子取引の記録を保存するという方法があります。
たとえば、電子取引データを管理するためにクラウドサービスを活用する場合、なんらかの理由で突如サービスが利用できなくなるなどのトラブルが発生するかもしれません。
このような万が一の事態も想定して、適正事務処理規程を準備・制定しておくことは安全性の確保につながります。
規程を作成する際は、国税庁のサイトで公開されている「ひな形」を使うと効率的です。
参照:国税庁|電子帳簿保存法関係 参考資料(各種規程等のサンプル)
ひな形をベースにして、自社に合わせた規定を作成しましょう。
適正事務処理規程の作成でお悩みの場合は、補助金活用支援合同会社でもご相談を承っております。
4-4.検索機能の実装:提示の必要性
請求書や契約書などの関連書類との紐づけとして必要なのが、検索機能の実装です。
必須条件は、「年月日」「金額」「取引先」の3項目で検索できること。
専用のシステムを導入する方法もありますが、ファイル名やフォルダ名を工夫する方法でも対応することができます。
たとえば、PDFやスクリーンショットなどで電子保存する書類のファイル名に「年月日」「金額」「取引先」を組み込み、月ごとにフォルダを作成して保管します。
こうした工夫により、対象ファイルを検索しやすくなります。
税務署による調査の際に必要書類をすばやく提示するためには、書類がきちんと整理されている状態が理想です。
ただし、大量の書類を手作業で整理するのは現実的ではないため、そのような場合はシステムの導入を検討してみましょう。
システムの導入には補助金や助成金が活用できる場合があるので、ぜひ補助金活用合同会社へご相談ください。
ちなみに、年間売上高が1,000万円以下の事業者であれば検索機能の実装は不要となっていましたが、「検索機能実装不要の対象幅を年間売上高が5,000万円以下まで広げることを検討している」との報道もあるため、今後の動きを注視しつつ、自社にとって最適な方法を選びましょう。
5.電子化の流れに乗って緩和措置期間に紙保存の廃止に取り組もう!
https://www.photo-ac.com/main/detail/3244442
電子帳簿保存法改正において、「紙保存」での容認期間は、現状2023年12月末日までとなっています。
容認期間が延びる可能性もありますが、インボイス制度の施行も迫る中、今後あらゆる分野でデジタル化・電子化が進んでいくことは避けられないでしょう。
電子データで保存することは、書類の保存場所が少なくてすむ、書類の整理がしやすいなどのメリットがあり、企業の生産性向上を図るうえでも有益です。
電子化の流れに乗って、できるところから紙保存の廃止に取り組んでみましょう。
補助金活用支援合同会社では、電子帳簿保存法の電子保存についてのお悩みも、一緒に解決すべくクライアントの皆様と伴走していきたいと考えています。
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