事業承継・引継ぎ補助金は、事業再編や事業統合を含む「承継」により、経営革新等に取り組む中小企業・小規模事業者を対象とした助成金です。
2023年度に助成金の補助額や対象が一部変更となり、より使い勝手がよくなりました。
今回の記事では、事業承継・引継ぎ補助金の2023年度改正点を解説し、申請の流れや注意点もご紹介します。
目次
1. 事業承継・引継ぎ補助金の概要
事業承継・引継ぎ補助金は、事業の再編や統合を含む「事業承継」をきっかけに、経営革新などを行う中小企業・小規模事業者が対象です。
主には以下の補助事業を行うことで事業の承継・再編・統合を促し、日本全体の経済を活性化させることが目的の補助金です。
- 経営革新等に必要な経費を一部補助
- 事業再編または統合に伴う資源引継ぎに必要な経費を一部補助
2. 事業承継・引継ぎ補助金|2023年の変更ポイントは2つ
事業承継・引継ぎ補助金は、2023年度に以下2点の改正が実施されています。
- 賃上げを実施すれば補助上限額が引上がる
- 後継者が引継ぎ予定の場合も補助対象になる
この改正によって、より使い勝手がよくなりました。
2-1. 賃上げを実施すれば補助上限額が引上がる
事業承継・引継ぎ補助金では、ある一定額の賃上げを行う場合に限り、経営革新事業における補助額の上限が600万円から800万円に引上げられ、補助が手厚くなりました。
これまでの上限額 | 2023年度以降の上限額 |
|
(対象経費900万円は補助金額にすると600万円) |
2-2. 後継者が引継ぎ予定の場合も補助対象になる
2023年度の改正により、経営革新事業における経営者交代型の対象が「引継いだ場合」のみでなく「後継者が引継ぎ予定の場合」も含まれるようになりました。
引継ぎ前であっても、後継を予定していれば対象となるため、事業承継・引継ぎ補助金の活用できるタイミングが長期化し、活用シーンの幅が広がっています。
3. 事業承継・引継ぎ補助金は3つの類型がある
事業承継・引継ぎ補助金には、対象になる経費の種類や取り組みの内容によって、以下3つの類型があります。
- 経営革新事業類型
- 専門家活用事業類型
- 廃業・再チャレンジ事業類型
各事業類型について、概要をご紹介します。
3-1. 経営革新事業類型
経営革新事業類型は、事業承継やM&A(企業の合併・買収)を契機とした経営革新等を補助の対象としています。
経営革新事業類型ではさらに3種類の型に分かれます。
類型 | 対象の事業 |
Ⅰ型:創業支援型 | ・対象期間内での法人設立または個人事業主としての開業 ・創業に向けて、廃業予定者から株式や事業の譲渡に伴って、設備、従業員、顧客などの経営資源を引継ぐ 上記2つをすべて満たす事業が対象となる。 ※一部の資源(設備など)のみを引継ぐ場合は原則該当しない。 また、物品や不動産等のみを保有する事業における、売買を含む承継は対象外。 |
Ⅱ型:経営者交代型 | ・親族内での承継や、事業再生を含む従業員承継等の事業承継 ・産業競争力強化法の認定事業者または特定創業支援事業を受ける者など、一定の経営実績・知識等を有した者である 上記2つをすべて満たす事業が対象となる。 ※承継者が法人である場合、事業譲渡や株式譲渡等による承継は原則対象外。 |
Ⅲ型:M&A型 | ・事業再編・統合などのM&A ・産業競争力強化法の認定事業者または特定創業支援事業を受ける者など、一定の経営実績・知識等を有した者である 上記2つをすべて満たす事業が対象となる。 ※物品や不動産等のみを保有する事業における、売買を含む承継は対象外。 |
経営革新事業類型の詳しい申請要件については、公式HPをご確認ください。
3-2. 専門家活用事業類型
専門家活用事業類型は、M&Aに伴う経営資源を引継ぐ際に、M&Aの専門家を活用するために必要となる費用を補助の対象としています。
ただし、不動産売買のみの引継ぎは、対象となる経営資源の引継ぎに該当ません。
専門家活用事業類型には2種類の型があり、経営資源の売り手と買い手の両方が対象です。
類型 | 対象の事業 |
Ⅰ型:買い手支援型 | 事業の再編または統合に伴って、経営資源を譲り受ける予定の企業等であり、以下の条件に該当する事業が対象。 ・事業の再編または統合に伴って経営資源を譲り受け、M&Aによる相乗効果を活かした経営革新の取り組みが見込まれる。 ・事業の再編または統合に伴って経営資源を譲り受け、地域経済をリードする事業の取り組みが見込まれる。 |
Ⅱ型:売り手支援型 | 事業の再編または統合に伴って、保有している経営資源を譲り渡す予定の企業等で、以下の条件に該当する事業が対象。
・地域経済をリードする事業に取り組まれており、事業の再編または統合によって第三者に継続されると見込まれる。 |
専門家活用事業類型の詳しい申請要件については、公式HPをご確認ください。
3-3. 廃業・再チャレンジ事業類型
廃業・再チャレンジ事業類型は、再チャレンジ目的で既存の事業を廃業するために必要な費用を補助します。
以下4つの廃業・再チャレンジを実施する企業などが対象です。
- 事業承継またはM&Aによって事業を譲り受けた後の廃業
- M&Aで事業を譲り受けた際の廃業
- M&Aで事業を譲り渡した際の廃業
- M&Aで事業を譲り渡せなかった廃業・再チャレンジ
廃業・再チャレンジ事業類型の詳しい申請要件については、公式HPをご確認ください。
4. 事業承継・引継ぎ補助金の申請方法と流れ|5つのステップ
事業承継・引継ぎ補助金の申請方法は電子申請であり、流れは以下のとおりです。
- 補助対象事業か確認する
- 電子申請を行うためにgBizIDプライムアカウントを発行する
- JGrantsで電子申請を行う
- 補助対象事業を実施・実績報告を行う
- 補助金が交付される
上記手順について解説します。
4-1. 補助対象事業か確認する
まずは、自社が補助対象の事業に該当するのかを確認しましょう。
事業承継・引継ぎ補助金の対象は、主に下記の4つの業種です。
- 製造業
- 卸売業
- 小売業
- サービス業
補助金の受給には、いくつかの要件を満たす必要があるため、詳しくは公式HPの公募要項を確認してください。
4-2. 電子申請を行うためにgBizIDプライムアカウントを発行する
まずは、gBizIDの公式HPでgBizIDプライムのアカウントを発行しましょう。
gBizIDは、さまざまな行政サービスにログインできる共通認証システムで、オンライン上で補助金申請や社会保険などの手続きが可能です。
アカウントには3つの種類があり、その1つであるgBizIDプライムは法人代表者や個人事業主を対象とし、補助金の申請などに必要となります。
gBizIDに関する詳しい解説は、以下の記事をご確認ください。
GビズIDとは?アカウントの登録方法からできることまで分かりやすく解説!
【より便利に】gBizIDがリニューアル!基本~新しくなった内容を紹介
4-3. jGrantsで電子申請を行う
jGrantsとは、補助金申請に伴う事務作業を簡素化を目的とした、登録・利用無料の「電子申請」システムです。
本来、行政手続きには本人確認や押印が必要ですが、jGrantsではシステム上で本人確認を行う手段としてgBizIDを採用することで、円滑な申請業務を実現しています。
詳しくはjGrants公式HPをチェックしましょう。
jGrantsに関する詳しい解説をまとめた以下の記事も参照してください。
JGrantsで補助金申請!メリット・デメリットや利用の流れを解説
4-4. 補助対象事業を実施・実績報告を行う
交付申請後は中小企業庁で審査され、審査の結果通知はjGrantsで確認します。
交付決定の通知を受けたら、補助対象事業の取り組みを実施したことと、その実績を報告します。
ただし、対象期間に契約し、支払いを終えていないと、対象経費として認められないため注意が必要です。
4-5. 補助金が交付される
原則15日以内に実績を報告し、内容に問題がなければ、補助金の額が確定し交付されます。
事業承継・引継ぎ補助金は支払い後に公布される仕組みなので、資金繰りには注意しましょう。
5. 事業承継・引継ぎ補助金を申請する際の注意点
事業承継・引継ぎ補助金の申請では、以下の2点は適用外のため注意しましょう。
- 過去に事業承継・引継ぎ補助金の交付決定を受けた場合
- 同一または類似事業が補助金の交付が見込まれる場合
同一または類似事業に該当するかどうか分かりにくい場合や、複雑な申請業務に関して疑問や悩みがある場合は、専門家への相談を検討するのがおすすめです。
相談を検討したい方は、補助金活用支援合同会社へお問い合わせください。
6. 事業承継支援助成金(東京都)も要検討
事業承継・引継ぎ補助金は日本全国の事業者が対象の補助金ですが、「事業承継支援助成金」は、東京都中小企業振興公社の助成金事業です。
事業の承継や経営改善の取り組みを専門家などに委託して行う場合に、事業承継支援助成金が活用できます。
東京都内の中小企業が、成長・発展に向けて新たな事業を展開できるよう、スムーズな事業の承継または経営の改善を支援することを目的とした助成金です。
東京都を拠点としている企業であれば、こちらの活用も検討してみましょう。
詳しくは公式HPをご確認ください。
7. 事業承継・引継ぎ補助金を活用して新しい事業の取り組みを実現しよう
事業承継・引継ぎ補助金は、2023年度に以下2点の改正され、使い勝手がよくなりました。
- 賃上げを実施すれば補助上限額が引上がる
- 後継者が引継ぎ予定の場合も補助対象になる
事業承継・引継ぎ補助金を活用することは、新しい事業の取り組みにチャレンジするキッカケにもなります。
受給にむけて必要となる複雑な申請業務や、業務に伴う疑問・悩みの解決は、補助金活用支援合同会社にご相談ください。
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