ビジネス市場が激しく変化する中、事業を継続していくために国からの補助金や助成金をうまく活用していくことは、戦略上とても重要なこと。
しかし、補助金や助成金の申請手続きは複雑なこともあるため、意図せず不正受給になってしまうケースもあるので注意が必要です。
本記事では補助金の不正受給により課される罰則や、逮捕起訴されることによる影響について解説します。
また、なぜ不正受給はバレるのか、そして意図せず不正受給してしまうような状況にならないために気をつけるポイントについて、実際に逮捕起訴された不正受給事例もあわせて紹介します。
目次
1.補助金や助成金の不正受給は犯罪!
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補助金や助成金の不正受給は、知らなかったではすまされない犯罪行為です。
具体的にどのような犯罪行為になってしまうのか、知っておきましょう。
1−1.補助金や助成金の不正受給とは?
補助金や助成金の不正受給は、実際とは異なる内容で書類を作成して申請する行為です。
該当事業を実施していないにも関わらず補助金を申請する、売上金を偽って書類を作成するなどの行為があると不正受給とみなされます。
実際には補助金を受け取らず、書類を申請しただけの状況でも不正受給になるのでご注意ください。
1−2.補助金や助成金の不正受給はどんな犯罪になるの?
補助金や助成金の不正受給が発覚した場合、刑法 第246条の詐欺罪で立件されます。
詐欺罪は重罪になるため、初犯でも執行猶予なしの実刑となる可能性があります。
1−3.補助金や助成金の不正受給による刑罰の時効はいつ?
詐欺罪が適用される場合、立件して訴追するための公訴時効は7年です。
公訴時効とは刑事事件の時効のことで、逮捕された被疑者を検察官が起訴できる期間のことです。
ただし、公訴時効には例外もあり、被疑者が海外にいる場合はその期間は時効が停止するため、事実上時効が延長されることになります。
旅行や仕事で海外にいる間に公訴時効が過ぎたと思っていたら、実は時効前で、ある日突然逮捕・起訴されるケースもあります。
2.不正受給するとどのような罰則があるのか
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不正受給が発覚した場合、次のような罰則が課される可能性があります。
2−1.関係者の詐欺罪での逮捕・起訴
関係者が不正受給を疑われて捜査が進むと、下記の流れで逮捕・起訴される可能性があります。
2−1−1.詐欺罪での逮捕
補助金や助成金の不正受給が発覚し詐欺罪が適用された場合、会社代表や不正受給に関与した社員は逮捕されるケースがあります。
逮捕・勾留された場合は、長期間身柄を拘束されることも珍しくありません。
2−1−2.詐欺罪での起訴
不正受給が発覚し関係者が逮捕された場合は、検察に身柄が送られます。
詐欺罪が成立する要件がそろっているか確認され、要件を満たしている場合は起訴され刑事裁判へと発展します。
詐欺罪の場合、刑法にて「10年以下の懲役」を科されることが定められており、最大で10年間刑務所に収監される可能性があります。
2−1−3.返還しても起訴される可能性がある
不正受給が発覚した後に自主的に受給した金額を返還したとしても、詐欺罪で起訴される場合があります。
これは刑法250条にて「だます行為をした時点で詐欺罪が成立して罰せられる」と定められており、給付の有無や返還したかどうかは問われないからです。
2-2.社名を含め会社の情報が開示される
不正受給となった場合、補助金の交付を行う経済産業省や、各自治体の労働局の公式サイトにて、会社名、所在地、代表者氏名、不正受給の内容が公表されます。
会社名で検索をかけると、誰でもこの情報にアクセスできるため、顧客や取引先が不正受給をした事実を知れば会社の社会的信用が失墜してしまい、最悪会社が倒産してしまうケースもあるでしょう。
不正受給のニュースは話題性が高くマスコミも扱うことが多いので、ネットニュースなどで実名報道されることもあります。
その場合、半永久的に自身の犯罪歴が残るリスクがあるのです。
2−3.補助金全額+違約金を返還しなければならない
不正受給を行った場合、受け取った金額の全額返還が求められます。
その際、各補助金にて定められた交付規定により、加算金や遅延金の支払いを求められることも。
たとえば、IT導入補助金の場合は、加算金や遅延金について以下の通りに定められています。
(加算金)
第29条 補助事業者は、前条の規定による返還の命令を受けた場合は、補助金受領の日から納付の日までの日数に応じ、返還すべき額につき年利10.95パーセントの割合 を乗じて計算した加算金を事務局が指定する方法で納付しなければならない。
(延滞金)
第30条 補助事業者は、第28条の規定による返還の命令を受け、事務局が指定する期限までに返還金(加算金がある場合には加算金を含む。)を納付しなかった場合は、納付期限の翌日から納付の日までの日数に応じ、未納付の額につき年利10.95パーセ ントの割合を乗じて計算した延滞金を事務局に納付しなければならない。
このように、交付を受けた金額以上の支払いを求められます。
3.補助金や助成金を不正受給した事例
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実際に不正受給で逮捕・起訴された事例は少なくありません。
ここでは3つの事例を紹介します。
3−1.不正受給事例①:GoToトラベル補助金の不正受給
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受ける観光業界を支援するために、2020年に始まった「GoToトラベル」。
広島市の民泊施設に客が泊まったように見せかけた嘘の申請をして、補助金をだまし取ろうとした詐欺の疑いで、東京都の男性が逮捕されました。
容疑者は、実際には宿泊していない6人の客がGoToトラベル事業を利用して泊まったように偽って、オンラインで補助金を申請。
虚偽申請をした際は、知人の名前を使っていたとみられています。
3−2.不正受給事例②:マスコミ関係者によるIT補助金の不正受給
2022年3月1日、経済産業省の「IT導入補助金」をめぐる不正受給事件で大阪府警は、テレビ朝日社員で報道番組の担当デスクの男性を詐欺の疑いで逮捕。
テレビ朝日では2月にも別の社員が同じ手口の詐欺容疑で逮捕されており、複数の社員が詐欺に関わっていたことが明らかになっています。
同じく逮捕されたホームページ制作会社代表と共謀し、「ITツール導入補助金」を不正受給。
この代表が関係する企業を含め、中小企業18社がITツールを導入したと嘘の申請を行い、国から計900万円をだまし取ったとみられています。
3−3 不正受給事例③:中小企業緊急雇用安定補助金の不正受給
2013年6月神奈川労働局は、相模原市の機械部品製造業の会社が、「中小企業緊急雇用安定助成金」約5億1500万円を不正受給したことを発表しました。
同社は2009年4月から2012年9月にかけて、実際には出勤している従業員のタイムカードを、休業しているかのように偽造し、その期間中に職業訓練を実施したかのように見せかけ不正受給を行ったとみられています。
4.不正受給はなぜバレるのか?
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補助金を不正受給してしまっている場合、それがバレてしまう理由にはどのようなものがあるのでしょうか。
4−1.厚生労働省による補助金の実地調査でバレる!
補助金によっては事業者への実地調査が行われ、そこで不正受給が発覚する場合があります。
「3−3.不正受給事例③:中小企業緊急雇用安定補助金の不正受給」で紹介した相模原の製造業者の場合は、神奈川労働局が抜き打ちで実地調査に入ったところ、申請では「1日中実施」のはずの職業訓練が、実際には半日で終わっていたことが、調査の際に見つかった書類から発覚しました。
4−2.確定申告の内容や調査でバレる!
近年は新型コロナウイルスによる経済的な打撃を救済するため、国からさまざまな補助金や助成金が支給されていますが、その支給の際に提出した確定申告から税務調査が入り不正受給が発覚するケースがあります。
たとえば、「持続化給付金」の申請では前年度の確定申告が必要です。
それまでずっと無申告だった人が、持続化給付金の受給要件を満たすためだけに前年度分のみ確定申告を行った場合、税務調査の対象になる可能性があります。
4−3.内部告発でバレる!
各自治体の労働局の公式サイトには、不正受給を告発するための専用投稿フォームがあります。
経済産業省では不正受給の情報提供窓口としてコールセンターを設置し、ここには数多くの情報が匿名にて寄せられているとのことです。
5.不正受給防止のための実地調査とは?
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不正受給を防止するために、関係省庁主導のもとさまざまな場所で実地調査が行われています。
ここでは実地調査がどのように行われるか紹介していきます。
5−1.不正受給防止のための実地調査の概要
不正受給防止のための実地調査とは、各種補助金を管轄する、労働局や中小企業庁による調査です。
売り上げや社員の勤務状況などが、補助金を申請した際に提出した書類の内容と一致しているかを調査員が調べます。
5−2.調査の流れ
実地調査の際は、不正受給に関わる書類の改ざんや証拠隠滅が行われないよう、事前連絡なしで調査員が事業所を訪問。
出勤簿、賃金台帳等、支給要件に関わる書類のチェックがおこなわれ、従業員へのヒアリング調査も実施されます。
5−3.調査に備えてそろえておくべき書類
役所の人が突然やってくると聞くと身構えてしまうものですが、実地調査は決して恐ろしいものではありません。
きちんと対応し問題がなければすぐに終わりますので、そのためにも次の書類は常にそろえておきましょう。
●会計帳簿
●賃金台帳
●補助金に関連する領収書
●社員のタイムカードや出勤簿
6.補助金や助成金の不正受給にならないためには?
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国からの補助金や助成金の数が増えていることは喜ばしいことですが、複雑な受給要件ゆえに意図せず不正受給になってしまうケースも増加しています。
ここでは不正受給にならないための3つのチェックポイントを、「事業再構築補助金」を例に挙げて紹介します。
6−1.事業再構築補助金とは?
事業再構築補助金は、厳しいビジネス環境が続く中で、新分野展開、業態転換など思い切った「事業再構築」を目指す中小企業を支援する補助金のことです。
6−2.チェックするべき3つのポイント
チェックすべき3つのポイントは以下の通りです。
6−2−1.ポイント①:根拠のある事業計画書を作成しておく
事業再構築補助金を申請する場合は、新しく始めるビジネスに関する事業計画書を作成する必要があります。
具体的な根拠や数字を記載した事業計画書でなければ審査が通らないため、自社の状況についてしっかりと分析することが必要不可欠です。
このような根拠のある事業計画書は作成に時間がかかる場合があるので、補助金を申請する前に、準備をしておきましょう。
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6−2−2.ポイント②:新しい事業について簡潔に説明できるようにしておく
事業構築補助金は、受給要件を満たせば簡単に受給できるというものではなく、売り上げが減少する中で新しいビジネスモデルを立ちあげる事業者のみが受給できる制度です。
しっかりと計画を立て、なおかつビジネスモデルについて誰が聞いてもわかるよう、簡潔に説明できるようにしておきましょう。
6−2−3.ポイント③:経済産業省が開発したjGrantsに関して理解しておく
事業再構築補助金は、2019年経済産業省が開発した電子申請システム「jGrants」を使って申請する必要があります。
従来の補助金の申請は紙をベースにしたものがほとんどでしたが、今後はjGrantsを活用した申請が増えてくることが予想されるため、電子申請に関しての予備知識が必要です。
慣れないうちは操作を誤り、書類に不備が出てしまうこともありますので、サポート機関の利用なども検討しましょう。
7.正しい申請を行うためにはプロの手を借りよう!
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補助金や助成金の不正受給は「知らなかった」「うっかりしていた」ではすまされず、刑事上のペナルティも科せられる犯罪です。
しかし正しく申請をすれば、補助金や助成金はビジネスチャンスを広げ、会社を維持し成長させていくためのすばらしい制度です。
給付を受ける際は、意図しない不正受給を避けるためにも、補助金に関して詳しい知識を持つ専門家と一緒に申請を行うことをおすすめします。
補助金支援合同会社では、補助金に関するご相談を承っております。
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