経営セーフティ共済とは?概要や手続き方法を紹介|節税できる理由も解説

自社の経営を健全に行っていても、取引先の倒産は予測できず、経営難や連鎖倒産に陥るリスクはゼロではありません。
経営セーフティ共済は、取引先の倒産といった不測の事態に備え、必要な事業資金を速やかに借入れでき、掛金の積立で節税効果も得られる共済制度です。
今回は、経営セーフティ共済の概要や手続き方法、節税できる理由について解説します。

1. 経営セーフティ共済の概要

中小企業倒産防止共済制度である「経営セーフティ共済」は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営しています。
取引先の倒産などによって、中小企業が経営難に陥ってしまったり連鎖倒産してしまったりするのを防ぐ目的で、昭和53年4月に創設されました。
加入者は毎月掛け金を払うことで、不測の事態に必要な資金を無担保・無保証人で借入れできるほか、掛金を損金または必要経費に算入できる税制優遇を受けることができます

経営セーフティ共済の4つのポイントは、以下のとおりです。

無担保・無保証人で借入れ可能 無担保・無保証人で資金を借入れできる。

なお、共済金の貸付額は、以下のいずれか少ないほうが上限金額となる。

・納付した掛金総額の10倍(最高8,000万円)

・回収が困難となった売掛金債権等の金額

取引先の倒産後すぐに借入れ可能 取引先が倒産して売掛金債権等の回収が難しくなったとき、倒産した事業者との取引が確認でき次第、すぐに借り入れができる。
掛金は損金または必要経費に算入可能 掛金は、法人なら損金、個人事業主なら必要経費に算入できる。

掛金の月額金額は、5,000円から自由に選択でき、増額・減額も可能。

解約手当金を受けとれる 共済契約を解約した場合、解約理由が自己都合でも解約手当金が受け取れる。

・12か月以上納めた場合、掛金総額の8割以上

・40か月以上納めた場合、掛金全額

ただし、12か月未満は掛け捨てとなる。

2.経営セーフティ共済の対象者

経営セーフティ共済の対象者は、加入要件に該当していて、1年以上事業を継続している中小企業者です。
会社または個人の事業者の場合、各業種別に設定されている以下2項目の条件のうち、いずれかに該当する必要があります。

業種 資本金額または出資総額 常時稼働している従業員の数
小売業 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下

上記以外の業種については、以下のサイトページでご確認ください。
【中小機構|経営セーフティ共済・加入資格】https://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/entry/eligibility/index.html

また、以下のいずれかに該当する組合も対象となります。

  • 企業組合、協業組合
  • 共同生産・共同販売等の共同事業を行う事業協同組合、事業協同小組合、商工組合

ただし、医療法人・NPO法人・農事組合法人・農業協同組合・森林組合・外国法人等については対象外です。

なお、要件を満たしていても、以下のような場合は加入対象外となります。

  • 住所や事業の変更が繰り返し行われ、継続的な取引の状況の把握が困難
  • 事業に関する経理の内容が不明
  • 中小機構から返還請求を受けた貸付金や手当金の返還を怠っている
  • 所得税や法人税を滞納している
  • 中小機構によって共済契約を解除され、解除された日から1年を経過していない

上記の他にも加入できない対象がいくつかあるため、詳しくはサイトをご確認ください。
【中小機構|経営セーフティ共済・加入資格】 https://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/entry/eligibility/index.html

3. 経営セーフティ共済の掛金

経営セーフティ共済の掛金について、掛金月額と掛金の積立限度額、納付方法、税制優遇、節税ができる理由をご紹介します。

3-1. 掛金月額と掛金の積立限度額

共済掛金は、月額5,000〜20万円で、5,000円単位で自由に選択でき、掛金の積立限度額は800万円です。
掛金の総額が積立上限の800万円に達すると掛金は自動的に停止され、中小機構より通知がきます。
また、必要な手続きをすれば掛金を一括で前納もでき、前納した場合は割引相当の前納減額金があります。
ただし、さかのぼって掛けたり、掛金の一部を引き出したりすることはできません。

3-2. 納付方法

掛金の納付方法は、預金口座での振替による払込みです。
毎月の掛金は、所定の手続きをすれば増額・減額が可能であり、減額には以下の条件があります。

  • 契約者の事業規模が縮小した場合
  • 経営の悪化や、病気等による急な出費などで、掛金の納付が困難な場合
  • 共済金の貸付残高+掛金総額の10倍相当の額=8,000万円以上の場合

3-3. 掛け金は税制優遇を受けられる

経営セーフティ共済の掛金は、税制優遇を受けられるメリットがあります。
税法上、契約者が法人の場合は損金に、個人事業主の場合は必要経費に算入が可能なため、節税しながら万が一に備えることが可能です。

前納掛金も、該当期間に応じて損金または必要経費に算入できます。
ただし、個人事業主の場合、不動産所得などの事業所得以外の収入に対しては、必要経費としての算入が認められません。

4. 経営セーフティ共済で節税ができる理由

経営セーフティ共済で掛金を支払うことは、法人税・所得税・住民税の節税につながります。

たとえば、業績が黒字なら掛金を増額して節税対策を行うことが可能です。
赤字や利益の少ない年には解約手当金を税金分に充てることもできます。

また、退職者や多額の損失が出たなど、大きな支出が必要な時には、解約手当金を受け取って資金繰りの改善も可能でしょう。
そのほかにも、大規模な設備投資をしたいとき、人材確保したいとき、宣伝を行いたいときなども、解約手当金が役に立つタイミングといえます。
経営セーフティ共済では、どのような業績であっても、その状況に応じた節税が可能です。

5. 経営セーフティ共済の加入手続き

経営セーフティ共済の加入手続きは、中小機構と業務委託契約を結んでいる団体(委託団体)または金融機関の窓口への書類提出が必要です。
手続きを行う窓口によって手順が異なるので、以下で確認しておきましょう。

5-1. 窓口での手続き

窓口で手続きする場合の手順は以下のとおりです。

  1. 必要書類を準備、記入する
  2. 中小機構と業務委託契約を結んでいる団体または金融機関の窓口へ書類を提出する
  3. 約2ヶ月後、中小機構から書類が届く

手続きが可能な窓口については、以下のような団体・金融機関が該当します。

委託団体 金融機関の本支店
商工会
商工会議所
中小企業団体中央会
中小企業の組合
損害保険ジャパン株式会社
都市銀行
信託銀行
地方銀行
第二地方銀行
信用金庫
信用組合
商工組合中央金庫【経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)】 代理店(金融機関)一覧 -加入-

5-2. オンライン手続き

経営セーフティ共済にオンラインで加入する場合は、「経営セーフティ共済オンライン手続きポータル」から行います。
オンライン上で契約申込書類を作成して印刷し、中小機構と業務委託契約を締結している金融機関か、委託団体に提出する必要があります。

以下のサイトページでは、希望の手続きパターンごとの手順についてまとめたPDFファイルが確認できるので、詳しくはご参照ください。
【中小機構|経営セーフティ共済・オンラインでの加入】 https://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/entry/online/index.html

なお、オンライン手続きポータルの利用には、gBizIDのアカウントが必要です。
gBizIDについては、以下の記事でご紹介していますので、ご確認ください。
【より便利に】gBizIDがリニューアル!基本~新しくなった内容を紹介

6.経営セーフティ共済での借入れ方法

共済金の借入れは、取引先が以下に該当する倒産をしたことで、売掛金債権などの回収が困難な場合に受けられます。

  • 法的整理
  • 取引停止処分
  • でんさいネットの取引停止処分
  • 私的整理
  • 災害による不渡り
  • 災害によるでんさいの支払不能
  • 特定非常災害による支払不能

上記に該当する有事の際に利用ができる、経営セーフティ共済の借入れについてご紹介します。

6-1. 共済金の借入れ

共済金の借入れ額は、原則50万円からで、5万円単位で最高8,000万円まで可能です。
なお、借入額は以下のうち少ない額が該当となります。

  • 被害額
  • 掛金総額の10倍に相当する額

借入れに担保・保証人は必要なく、無利子で受け取り可能です。
ただし、借入れ後は払い込んだ掛金から借入額の10分の1相当の額が控除されます。
返済には、全ての借入れにおいて6か月の据置が設けられており、具体的な返済期間は借入額に応じる形です。
また、返済は均等分割で毎月返済する必要があり、返済期日までに返済がないと違約金(年14.6%)が課せられるため、計画的な返済が必要です。

借入額 返済期間(据置期間含む) 返済の分割月数
~5,000万円未満 5年 54か月
5,000万円~6,500万円未満 6年 66か月
6,500万円~8,000万円以下 7年 78か月

6-2. 一時貸付金の借入れ

一時貸付金とは、取引先が倒産していない場合でも、事業の運転または設備資金が必要なときに借入れできる制度です。
借入額は30万円以上(5万円単位)で、限度額は、機構解約(中小機構側からの強制的な契約解除)の場合に支払われる解約手当金の95%の範囲内です。

担保・保証人は不要ですが、利率は融情勢に応じて変動し、返済は1年の期限内に一括償還となります。
共済金の借入れ同様、返済期日までに一時貸付金の返済がないと違約金が課せられ、返済期日から5か月返済がない場合、納付された掛金が返済・違約金の納付に充てられます。

6-3. 解約手当金

解約手当金は、12か月以上掛金を納付している場合に支給されます。
解約の理由によって異なる3つの分類ごとに支給率が変わり、掛金納付月数が長いほど支給率が高くなります。

分類 解約理由 支給率
任意解約 契約者が任意で行う解約 80%以上
みなし解約 個人事業主の死亡、法人の解散・分割時点でのみなし解約 85%以上
機構解約 12ヶ月以上の掛金滞納、または共済金貸付けなどで不正行為があった場合に、中小機構が行う解約 75%以上

詳しい支給率は、以下のサイトページでご確認ください。
【中小機構|経営セーフティ共済・一時貸付金について】https://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/about/loan/index.html

7.経営セーフティ共済で万が一に備えながら税制優遇を受けよう

不測の事態にあった場合を考え、備えておける共済制度を活用しておくと、万が一の状況でも落ち着いて対処しやすくなります。
もしもの時に備えて掛金を積み立てながら、業績に応じて節税もできる経営セーフティ共済の活用を、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

経営セーフティ共済のほか、補助金や助成金を活用できるシーンも多くあります。
合同会社SCSでは、補助金や助成金の活用を支援しておりますので、お気軽にご相談ください。

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監修者プロフィール

補助金コンサルタント 上田 晃生

1977年生まれ神奈川県横浜市出身。
OA機器の営業から飲食業界に入り店長・統括等を経験し、経営コンサルタント会社へ転職。

2021年に合同会社SCSを設立し独立。

経営者の潜在的な要望を引き出し、事業拡大を実現する「コンサルティング型」によって、1年間で100件以上の補助金申請をサポートし、1憶5千万円以上の採択を実現。

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