働き方改革推進支援助成金とは?制度概要から申請方法までをわかりやすく紹介!

働き方改革推進支援助成金とは

働き方改革とは、「少子高齢化にともなう働き手の減少」や「育児や介護との両立」などの課題を解決するために、多様な働き方を選択できる社会の実現を目指す取り組みのこと。
働き方改革を推進するためには、労働時間の是正や賃金の見直しなどを行い、さまざまな働き方が選択できる職場環境の整備が必要です。

厚生労働省では、働き方改革を推進するための支援として「働き方改革推進支援助成金」を実施しています。
今回は、働き方改革の推進に活用できる「働き方改革推進支援助成金」について詳しく紹介します。

1.働き方改革推進支援助成金の概要

働き方改革推進支援助成金は、働き方改革に積極的に取り組む企業を支援する助成金です。
生産性を高めながら、労働時間の縮減・休暇取得の促進などに取り組むことで、企業の労働時間の設定改善を促進することを目的に実施されています。

働き方改革に際して自社が抱えている課題への対応がしたい方や、年次有給休暇や特別休暇が取得しやすい職場環境作りをしたいという企業向けの助成金です。
【厚生労働省│労働時間等の設定の改善「働き方改革推進支援助成金」

2.働き方改革推進支援助成金の支援コース

働き方改革推進支援助成金では、4つの支援コースが用意されており、どのような取り組みを実施するかによって申請するコースが異なります。

申請には、「支給対象となる取り組みの実施」と「成果目標の達成」が必要になります。
支給対象となる取り組みは、団体推進コース以外共通です。

【支給対象となる取り組み】
”1.労務管理担当者に対する研修
2.労働者に対する研修、周知・啓発
3.外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など) によるコンサルティング
4.就業規則・労使協定等の作成・変更
5.人材確保に向けた取組
6.労務管理用ソフトウェアの導入・更新
7.労務管理用機器の導入・更新
8.デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
9.労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新”
【引用│働き方改革推進支援助成金

成果目標はそれぞれの支援コースによって異なるため、自社が行う取り組み内容と各コースの申請要件を照らし合わせ、最適なコースを選択するといいでしょう。

ここからは4つの支援コースについて詳しく紹介します。

2-1.業種別課題対応コース

令和6年4月1日から「時間外労働の上限規制」が適用された「建設業」「運送業」「病院等」「砂糖製造業」を対象としたコースです。
上限規制に円滑に対応するための取り組みを行う事業主を支援し、労働時間の設定改善を推進することを目的に実施されています。

【厚生労働省│働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース)

2-1-1.対象者

助成金の支給対象となるのは、以下のいずれにも該当する中小企業事業主です。

“(1)労働者災害補償保険の適用事業主であること。
(2)交付申請時点で、「成果目標」1から4の設定に向けた条件を満たしていること。
(3)全ての対象事業場において、交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けて
就業規則等を整備していること。
(4)以下のいずれかに該当する中小企業事業主であること。
常時使用する労働者数が300人以下もしくは資本金または出資額が3億円以下(病院等については5,000万円以下)の
ア.建設業
イ.運送業
ウ.病院等
エ.砂糖製造業”
【引用│働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース)

上記要件以外に「労働基準法」や「厚生労働省令」に定める事業主であることが求められています。
詳しくは公式サイトまたは支給要領をご覧ください。

2-1-2.申請要件

業種別課題対応コースでは、支給対象となる取り組みを1つ以上実施し、以下の成果目標を達成することで助成金の給付を受けることができます。

【成果目標】
”1:全ての対象事業場において、令和6年度又は令和7年度内において有効な36協定について、時間外・休日労働時間数を縮減し、月60時間以下、又は月60時間を超え月80時間以下に上限を設定し、所轄労働基準監督署長に届出を行うこと(全ての業種が選択可能)
2:全ての対象事業場において、年次有給休暇の計画的付与の規定を新たに導入すること(全ての業種が選択可能)
3:全ての対象事業場において、時間単位の年次有給休暇の規定を新たに導入し、かつ、特別休暇(病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇、不妊治療のための休暇、時間単位の特別休暇)の規定をいずれか1つ以上を新たに導入すること(全ての業種が選択可能)
4:全ての対象事業場において、9時間以上の勤務間インターバル制度の規定を新たに導入すること(全ての業種が選択可能)
5:全ての対象事業場において、4週5休から4週8休以上の範囲で所定休日を増加させること(建設業が選択可能)
6:医師の働き方改革推進に関する取組として以下(1)、(2)を全て実施すること(病院等が選択可能)
(1)労務管理体制の構築等
ア.労務管理責任者を設置し、責任の所在とその役割を明確にすること
イ.医師の副業・兼業先との労働時間の通算や医師の休息時間確保、長時間労働の医師に対する面接指導の実施 に係る協力体制の整備を行うこと(副業・兼業を行う医師がいる場合に限る)
ウ.管理者層に対し、人事・労務管理のマネジメント研修を実施するなど、労働時間管理について理解を深める取組を行うこと
(2)医師の労働時間の実態把握と管理
労働時間と労働時間でない時間の区別などを明確にした上で、医師の労働時間の実態把握を行うこと”
【引用│働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース)

それぞれの業種ごとに選択できる成果目標が異なるため、自社の業種や状況にあった目標を設定しましょう。

2-1-3.助成金額

業種別課題対応コースでは、働き方改革へ向けた取り組みの実施に必要な経費の一部を「成果目標の達成状況」に応じて支給しています。

【助成金額】
”以下のいずれか低い方の額
(1)成果目標1から6の上限額および賃金加算額の合計額
(2)対象経費の合計額×補助率3/4(※1)
(※1)常時使用する労働者数が30人以下かつ、支給対象の取組で6から9を実施する場合で、その所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5”
【引用│働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース)

助成金の上限金額は、企業自らが選択した「成果目標」の達成状況によって異なりますので、公式サイトでご確認ください。

2-2.労働時間短縮・年休促進支援コース

時間外労働を削減し、年次有給休暇や特別休暇の促進に向けた職場環境整備に積極的に取り組む中小企業向けの支援コースです。

職場環境の整備・改善に成果をあげた企業を支援することで、働き方改革の1つである「中小企業における労働時間等の設定改善」の促進を目的に実施されています。

2-2-1.対象者

下記のいずれにも該当する中小企業事業主を助成対象としています。

”(1)労働者災害補償保険の適用事業主であること。
(2)交付申請時点で、「成果目標」1から3の設定に向けた条件を満たしていること。
(3)全ての対象事業場において、交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること。”
【引用│働き方改革推進支援助成金「労働時間短縮・年休促進支援コース」

この助成コースにおける「中小企業事業主」の区分については、公式サイトに明記されています。
業種ごとに中小企業事業主の要件が異なりますので、必ず確認しましょう。

2-2-2.申請要件

労働時間短縮・年休促進支援コースでは、支給対象となる取り組みの実施・成果目標の達成が申請要件として定められています。
以下の3つの成果目標の中から1つ以上を選択し、目標達成に向けた取り組みを実施しなければなりません。

【成果目標】
1から3のうち1つ以上を選択し、目標達成を目指して実施すること
”1:全ての対象事業場において、令和5年度又は令和6年度内において有効な36協定について、時間外・休日労働時間数を縮減し、月60時間以下、又は月60時間を超え月80時間以下に上限を設定し、所轄労働基準監督署長に届け出を行うこと
2:全ての対象事業場において、年次有給休暇の計画的付与の規定を新たに導入すること
3:全ての対象事業場において、時間単位の年次有給休暇の規定を新たに導入し、かつ、特別休暇(病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇、新型コロナウイルス感染症対応のための休暇、不妊治療のための休暇、時間単位の特別休暇)の規定をいずれか1つ以上を新たに導入すること”
【引用│働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)

上記以外に「労働者の時間当たりの賃金額引き上げ3%以上」を成果目標に加えることも可能です。
従業員への賃金引上げを成果目標に加えた場合には、引き上げ人数の合計に応じて助成金の上限額が加算されます。
詳しくは公式サイトまたは支給要領をご確認ください。

2-2-3.助成金額

労働時間短縮・年休促進支援コースでは、企業が行う取り組みにかかる経費の一部を助成金として給付しています。

【助成金額】
”以下のいずれか低い方の額
(1)成果目標1から3の上限額および賃金加算額の合計額
(2)対象経費の合計額×補助率3/4”
【引用│働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)

常時雇用している労働者の人数が30人以下の企業が、支給対象となる取り組みの6から9を実施し、所要額が30万円を超えた場合には、補助率が4/5に増額されます。
助成金上限額は、成果目標の達成状況によって異なるため、支給要領をご確認ください。

2-3.勤務間インターバル導入コース

勤務間インターバルとは、労働者の生活時間や睡眠時間を確保することで、健康保持や過重労働防止を図ることを目的に始められた制度です。
労働者の健康および福祉の確保を目的とした勤務間インターバルを導入する企業に助成金を支給しています。

2-3-1.対象者

以下のいずれの要件にも該当する中小企業事業主が助成対象です。

”(1)労働者災害補償保険の適用事業主であること
(2)次のアからウのいずれかに該当する事業場を有する事業主であること
ア 勤務間インターバルを導入していない事業場
イ 既に休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを導入している事業場であって、対象となる労働者が当該事業場に所属する労働者の半数以下である事業場
ウ 既に休息時間数が9時間未満の勤務間インターバルを導入している事業場
(3)全ての対象事業場において、交付申請時点及び支給申請時点で、36協定が締結・届出されていること。
(4)全ての対象事業場において、原則として、過去2年間に月45時間を超える時間外労働の実態があること。
(5)全ての対象事業場において、交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること。”
【引用│働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル)導入コース

勤務間インターバル制度についてより詳しい情報が知りたい方は、下記のページをご覧ください。
【厚生労働省│東京労働局「勤務間インターバル制度をご活用ください」

2-3-2.申請要件

支給対象となる取り組みの実施と以下の成果目標の達成が申請の要件となります。

【成果目標】
”事業主が事業実施計画において指定したすべての事業場において、休息時間数が「9時間以上11時間未満」または「11時間以上」の勤務間インターバルを導入し、定着を図ること。
具体的には、事業主が事業実施計画において指定した各事業場において、以下のいずれかに取り組んでください。
ア 新規導入
勤務間インターバルを導入していない事業場において、事業場に所属する労働者の半数を超える労働者を対象とする、休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルに関する規定を労働協約または就業規則に定めること
イ 適用範囲の拡大
既に休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを導入している事業場であって、対象となる労働者が当該事業場に所属する労働者の半数以下であるものについて、対象となる労働者の範囲を拡大し、当該事業場に所属する労働者の半数を超える労働者を対象とすることを労働協約または就業規則に規定すること
ウ 時間延長
既に休息時間数が9時間未満の勤務間インターバルを導入している事業場において、当該事業場に所属する労働者の半数を超える労働者を対象として、当該休息時間数を2時間以上延長して休息時間数を9時間以上とすることを労働協約または就業規則に規定すること”
【引用│働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル)導入コース

すでに勤務間インターバル制度を導入している企業が、対象者の範囲拡大や休息時間の延長を行うことでも成果目標が達成できるため、従業員の健康や福祉の向上を目指している企業におすすめの支援コースです。

2-3-3.助成金額

勤務間インターバル制度の導入にかかる経費の一部が成果目標の達成状況に応じて支給されます。

【助成金額】
”対象経費の合計額に補助率3/4(※)を乗じた額を助成します。
(※)常時使用する労働者数が30人以下かつ、支給対象の取組で6から9を実施する場合で、その所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5”
【引用│働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル)導入コース

勤務間インターバル制度を実施することで確保できる「休息時間数」によって、助成金の上限金額が異なります。

2-4.団体推進コース

団体推進コースは、中小企業事業主団体やその連合団体が働き方改革を行うときに活用できる支援コースです。
傘下事業主の労働者に定められている条件の改善に向けた取り組みを支援することで、労働時間などの改善推進に向けた環境整備を目的に実施されています。

2-4-1.対象者

以下のいずれかに該当する「1年以上の活動実績がある3事業主以上の団体」を助成対象としています。

【団体推進コース 対象者要件】
(1)事業主団体
ア.法律で規定する団体
イ.労働基準法に定める鹿児島県・沖縄県の砂糖を製造する事業に関連する団体
ウ.上記以外の事業主団体
(2)共同事業主
ア.労働基準法に定める工作物の建設事業やそのほかこれに関連する事業として厚生労働省令で定められている事業を主として営む事業主
イ.労働基準法に定める自動車運転業務に従事する労働者が所属する事業主
ウ.病院・診療所・介護老人保健施設または介護医療院を運営する事業主
エ.労働基準法に定める鹿児島県・沖縄県の砂糖を製造する事業を主とする事業主
【参照│働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)

共同事業主が働き方改革推進支援助成金の申請を行う場合には、共同するすべての事業主との合意に基づく協定書などの作成が必要です。
詳しくは公式サイトをご確認ください。

2-4-2.申請要件

申請には「支援対象となる取り組みの実施」と「成果目標の達成」が必要です。
団体推進コースでは、複数の事業主からなる団体を助成金の対象としているため、支援対象となる取り組みはほかの支援コースと異なります。
支給対象となる取り組みと成果目標はそれぞれ以下の通りです。

【支給対象となる取り組み】
”1.市場調査の事業
2.新ビジネスモデル開発、実験の事業
3.材料費、水光熱費、在庫等の費用の低減実験(労働費用を除く)の事業
4.下請取引適正化への理解促進等、労働時間等の設定の改善に向けた取引先等との調整の事業
5.販路の拡大等の実現を図るための展示会開催及び出展の事業
6.好事例の収集、普及啓発の事業
7.セミナーの開催等の事業
8.巡回指導、相談窓口設置等の事業
9.構成事業主が共同で利用する労働能率の増進に資する設備・機器の導入・更新の事業
10.人材確保に向けた取組の事業”
【引用│働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)
【成果目標】
”成果目標は、支給対象となる取組内容について、事業主団体等が事業実施計画で定める時間外労働の削減又は賃金引上げに向けた改善事業の取組を行い、構成事業主の2分の1以上に対してその取組又は取組結果を活用すること。”
【引用│働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)

どの取り組みを選択するかは団体それぞれで選択できますが、必ず1つ以上実施しなければなりません。
働き方改革推進支援助成金を活用してどのように成長したいのかを加味し、取り組み内容を選択するといいでしょう。

2-4-3.助成金額

支給対象となる取り組みを行うために必要な経費の一部が「成果目標の達成状況」に応じて支給されます。

【助成金額】
”以下のいずれか低い方の額
1.対象経費の合計額
2.総事業費から収入額を控除した額
3.上限額500万円”
【引用│働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)

申請する団体の規模が「都道府県単位」または「複数の都道府県単位」で構成する事業主団体の場合、助成金額の上限が1,000万円となります。
詳しくは支給要領をご確認ください。

3.働き方改革推進支援助成金の申請から受給までの流れ

働き方改革推進支援助成金は、企業本社所在地を管轄する都道府県労働局に「郵送」または「持参」で申請します。
申請から受給までのおおまかな流れは以下の通りです。

【申請から受給までの流れ】
1.交付申請書や必要書類の準備
2.申請書類の提出
3.審査
4.交付決定
5.事業の実施
6.事業の実施期間終了後、助成金支給申請書を提出
7.助成金の受給

厚生労働省が実施する助成金では、申請に必要な資料や役立つマニュアルが公式サイトで公開されています。
公開されている情報を常にチェックして最新の情報を得ておけば、助成金をより上手に活用できるでしょう。

4.働き方改革推進支援助成金は誰もが働きやすい労働環境作りに活用できる助成金!

働き方改革により、時間外労働の上限設定など制度の変更が行われている今、制度変更に柔軟に対応できる「労働環境作り」が求められています。
誰もが働きやすい労働環境を作ることは、従業員の満足度を引き上げ、結果として生産性の向上や業務効率化につながります。
これからの企業成長をスムーズに進めるなら、助成金や補助金などの支援制度の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

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監修者プロフィール

補助金コンサルタント 上田 晃生

1977年生まれ神奈川県横浜市出身。
OA機器の営業から飲食業界に入り店長・統括等を経験し、経営コンサルタント会社へ転職。

2021年に合同会社SCSを設立し独立。

経営者の潜在的な要望を引き出し、事業拡大を実現する「コンサルティング型」によって、1年間で100件以上の補助金申請をサポートし、1憶5千万円以上の採択を実現。

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