【令和5年度補正予算成立】政府が掲げる経済対策5本柱を徹底解説!

令和5年11月29日に政府案通りに可決した「令和5年度補正予算」。
政府は物価高騰対策や持続的賃上げなどを盛り込んだ5つの取り組みを柱とした「総合経済対策5本柱」を方針として掲げ、予算の編成を行いました。
今回は、政府が掲げる「総合経済対策5本柱」でどのような取り組みが行われるのかを、主な予算とともにわかりやすく解説いたします。
各省庁ごとの補正予算についても解説しますので合わせてご覧ください。

1.令和5年度補正予算の概要

令和5年度補正予算は「物価高の影響による社会や経済の変化」への対策を中心とした予算編成が行われ、すでに支援が行われている分の予算1.1兆円と合わせて1.6兆円規模の支援が予定されています。
定額減税などの「還元策」や関連経費を含めると、経済対策の総規模は1.7兆円ほどの見込みです。

政府は今回の補正予算で「企業の働く力の強化・賃上げ原資の供給強化」を目指しています。
詳しくは、財務省公式サイトをご覧ください。
【財務省│令和5年度補正予算

2.政府の掲げる経済対策5本柱

政府は「デフレ完全脱却のための総合経済対策5本柱」として以下の取り組みを実行するために、補正予算編成を行いました。

・物価高対策
・持続的賃上げ・所得向上、地方の成長の実現
・成長力強化・高度化を目的とした国内投資の促進
・社会変革の起動と推進
・国民の安心・安全確保

ここからは、それぞれがどのような対策についての予算なのかを解説します。

2-1.物価高対策

物価高によって厳しい状況にある人や事業者の支援、電気やガスなどのエネルギーコスト上昇に対する経済社会の耐性強化支援として27,363億円が予算計上されました。
物価高対策として計上された主な施策と予算額は下記の通りです。

施策名 予算額
重点支援地方交付金 低所得世帯向け支援(10,592億円)

推進事業メニュー(5,000億円)

電気・ガス・燃料油価格激変緩和措置 7,948億円

(既定経費と合わせて3.9兆円規模となる見込み)

家庭・住宅の省エネ・再エネの促進 2,399億円

(特別会計分と合わせて4,329億円)

このほかに、低所得者や低所得世帯に対する追加の給付措置も実施される見込みです。

2-2.持続的賃上げ・所得向上、地方の成長の実現

中堅・中小企業の賃上げ環境の整備や賃上げ継続支援、労働市場の改革推進、経済交流の拡大支援として13,303億円が予算計上されました。
持続的賃上げ・所得向上、地方の成長の実現に関する主な施策と予算額は以下の通りです。

施策名 予算額
中小企業省力投資補助制度 1,000億円

(既存基金などと合わせて5,000億円規模)

中堅・中小大規模投資補助金 1,000億円
介護職員等処遇改善 581億円
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業 97億円
水田の畑地化による畑作物の本作化 750億円
農林水産物・食品の輸出拡大 360億円
地方誘客促進によるインバウンド拡大、観光地・観光産業の再生・高付加価値化など 689億円

このほかにも、2024年以降も賃上げの流れを継続するために、賃上げ促進税制の検討が行われます。

2-3.成長力強化・高度化を目的とした国内投資の促進

生産性の向上や供給力を通じた潜在成長率を引き上げるための国内投資の拡大、イノベーションをけん引するスタートアップの支援のために13,403億円が予算計上されました。
成長力強化・高度化を目的とした国内投資の促進を目的とした主な施策と予算額は下記の通りです。

施策名 予算額
ムーンショット型研究開発制度 2,144億円
特定半導体基金(先端半導体) 6,322億円
ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発基金(次世代半導体) 6,175億円
安定供給確保支援基金(従来型半導体等) 2,948億円
工場・事業所・建築物などの省エネ・再エネの推進 488億円
生産性AI用計算資源の整備など 690億円
「GIGAスクール構想」の推進 2,761億円

この取り組みを通じて、日本経済の潜在成長率を高めるスタートアップ課題の解決、事業環境の整備が実施される予定です。

2-4.社会変革の起動と推進

人口減少や少子高齢化にともなう人手不足を乗り越え、経済社会活動の維持や発展を目的とした、デジタルの力を活用した社会変革の起動と推進のために、13,403億円が予算計上されました。
実施が予定されている主な施策と予算額は以下の通りです。

施策名 予算額
デジタル田園都市国家構想推進交付金 735億円
地域公共交通の維持・活性化の推進 279億円
自治体情報システムの標準化・共通化 5,163億円
マイナ保険証の利用促進・環境整備 887億円
マイナンバーカードの取得環境の整備など 899億円
電子処方箋の普及促進・環境整備 251億円
物流の革新実現に向けた取り組み 159億円
認知症関連施策 409億円
「こども誰でも通園制度(仮称)」の本格実施を見据えた試行的事業 91億円

このほかにも、少子化対策や公教育の再生などすべての人々がともに生きていくことができる包摂社会の実現に向けた取り組みが実施される予定です。

2-5.国民の安心・安全確保

防災・減災への対策や国土強靭化を通じた国民生活の安心・安全を確保するために、42,827億円が予算計上されました。
実施が予定されている主な施策と予算額は以下の通りです。

施策名 予算額
災害復旧 4,259億円
自衛隊等の安全保障環境への適切な対応など 8,080億円
防災・減災、国土強靭化対策 13,022億円
新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(病床確保など) 6,143億円
花粉症対策 60億円
アジア、島嶼国(※)、中東、アフリカなどグローバルサウスにかかる支援・連携強化 3,182億円
ウクライナ及び周辺国への支援 1,481億円
性犯罪・性暴力被害者支援の強化 29億円

※島嶼国(とうしょこく):大陸から距離の離れた島々で構成された発展途上国のこと

防災や減災、安全保障に関する施策だけでなく、花粉症対策のように、直接日常生活にかかわる社会の課題への対応も実施が予定されています。

3.令和5年度当初予算との比較

「令和5年度補正予算」と「令和5年度当初予算」では、歳出総額に変更がありました。
変更された背景としては、「総合経済対策5本柱」への取り組みや、国内での半導体生産に関する補助金の実施などが挙げられます。

歳入の面では、税収の上振れ分や税外収入を組み込んだ予算編成となっており、当初予算で計上されていた「予備費」の残り2兆5000億円も活用される見込みです。

【参考│令和5年度補正(後)予算フレーム

4.各省庁ごとの補正予算

ここからは、各省庁ごとの令和5年度補正予算についてわかりやすく解説します。
どうしてこのような予算額や予算編成になったのか、どのような施策を実施する予定であるかを見ていきましょう。

4-1.経済産業省

経済産業省では、総合経済対策の5本柱に沿って、下記のような予算編成が行われました。

・物価高対策:1.2兆円
・持続的賃上げ、所得の向上と地方の成長の実現:6,000億円
・成長力強化・高度化を目的とした国内投資の促進:2.7兆円
・社会変革の起動と推進:160億円
・国民の安心・安全:730億円

令和5年度補正予算では、燃料油の価格激変に対する緩和措置や中小企業生産性革命推進事業などの施策が行われる予定です。
【参考│経済産業省:経済産業省関連令和5年度補正予算の概要

4-2.厚生労働省

厚生労働省では、介護業界の処遇改善や医療、福祉分野のDX推進などを目的とした予算編成が行われました。

・医療・介護・障害福祉などの分野におけるもの価高騰への対応:1,016億円
・三位一体の労働市場改革の推進など:204億円
・次なる感染症に備えた対策など:7,908億円
・DX・イノベーションの推進:1,828億円
・国民の安全・安心の確保:872億円

令和5年度補正予算では、「年収の壁」の対応に向けた支援の強化や電子処方箋の普及促進などの施策が行われる予定です。
【参考│厚生労働省:令和5年度厚生労働省補正予算案のポイント
※補正予算は案の通りに可決されました。

4-3.総務省

総務省では、経済対策にかかる追加の所要額として「7,387億円」を計上しました。
予算は総合経済対策の5本柱に沿って編成され、経済の回復基調を地方へ波及させるための施策やデジタル行財政改革などの施策が行われる予定です。

また、地方交付税として85,84億円が計上され、地方交付税総額に加算した地方への配分や、地方公共団体金融機構の「公庫債権金利の変動準備金」の活用の見直しなどが検討されています。
【参考│総務省:令和5年度総務省管轄補正予算(案)の概要

4-4.農林水産省

農林水産省では、食料安全保障強化や農林水産施策の推進のために必要となる「8,182億円」を予算計上しました。
下記のような施策が実施される見込みです。

・食料安全保障の強化に向けた構造転換対策
・物価高騰などの影響緩和対策
・総合的なTPP等関連政策大綱に基づく施策の実施
・持続可能な成長に向けた農林水産施策の推進
・防災・減災、国土強靭化と災害復旧などの推進

農林水産業では、働き手が減少していることによる人手不足が問題視されています。
これをふまえ、令和5年度補正予算では、働き手の確保や経営力の強化を支援する施策も行われる予定です。
【参考│農林水産省:令和5年度農林水産関連補正予算の概要

4-5.国土交通省

国土交通省では、総合経済対策5本柱を基本的な考えとして、国費総額「2兆555億円」を下記のような配分で予算計上しました。

・物価高対策:2,140億円
・持続的賃上げ、所得向上と地方の成長の実現:1,938億円
・成長力強化・高度化を目的とした国内投資の促進:191億円
・社会変革の起動と推進:1,092億円
・国民の安心・安全:1兆5,195億円

また、このほかにも海上保安業務に必要な燃料費などの追加や財政投融資なども予算に組み込まれています。
令和5年度補正予算では、持続可能な観光推進事業や産業立地にかかわる関連都市のインフラ整備などの施策が実施される見込みです。
【参考│国土交通省:国土交通省関連補正予算の概要

4-6.文部科学省

文部科学省では、総合経済対策5本柱に沿った予算編成が行われ、総額「1兆2,912億円」が予算計上されました。
令和5年度補正予算では、クリエイターなどの活動基盤強化や生成AIの開発力強化、宇宙戦略基金の創設などの施策が実施される見込みです。

文部科学省の公表している補正予算のなかには、デジタル庁が計上した予算も含まれています。
【参考│文部科学省:令和5年度文部科学省関連補正予算

5.令和5年度補正予算は「デフレ完全脱却のための総合経済対策」予算!

令和5年度補正予算は、持続的な賃上げや活発な投資がけん引していく「成長型経済への変革」を行うための予算編成となっています。
今回の補正予算でも、引き続き「中小企業」に関する施策や事業も多く行われる見込みです。

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監修者プロフィール

補助金コンサルタント 上田 晃生

1977年生まれ神奈川県横浜市出身。
OA機器の営業から飲食業界に入り店長・統括等を経験し、経営コンサルタント会社へ転職。

2021年に合同会社SCSを設立し独立。

経営者の潜在的な要望を引き出し、事業拡大を実現する「コンサルティング型」によって、1年間で100件以上の補助金申請をサポートし、1憶5千万円以上の採択を実現。

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