従業員の健康管理について経営的な視点で考え、国民の健康寿命の延伸に関する取り組みを行う「健康経営」。
経済産業省では、健康経営を行う法人のなかでも特に優良な取り組みを行う法人を「健康経営優良法人」として認定し、社会的な評価を得られる環境の整備を実施しています。
今回は「健康経営優良法人」についての概要から、認定されることで得られるメリット、申請方法までをわかりやすく解説します。
目次
1.健康経営優良法人の概要
健康経営優良法人とは、従業員の健康管理を実施している企業のうち、取り組み内容が優良である企業が認定を受けられる認定制度のことです。
申請区分は、「大規模法人部門」「中小規模法人部門」の2つにわかれており、企業規模や従業員数によって申請できる区分が異なります。
健康経営:従業員などの働く人の健康管理について、経営的な視点で考え、実践すること。
日本再興戦略や未来投資戦略に位置づけられている「国民の健康寿命の延伸」に関する取り組みの1つ。
優良な健康経営を実施している企業を「見える化」することで、従業員や求職者だけでなく、関係企業や金融機関などからも社会的な評価を受けられる環境を整備するために始まりました。
健康優良法人の認定を得ることで、「健康優良法人の認定マーク」が利用可能になるほか、自治体や金融機関が実施しているさまざまなインセンティブを受けられるようになります。
【経済産業省│健康経営優良法人認定制度】
2.認定ロゴマークの種類
健康経営優良法人の認定を得ることで、専用の「認定ロゴマーク」を利用できるようになります。
認定ロゴマークは、従業員や求職者、取引先企業などへのアプローチや企業のイメージ向上に利用することができ、自社の公式サイトや名刺などに掲載することが可能です。
ロゴマークのカラーは2種類あり、大規模法人部門で認定を受けた場合には「オレンジ」、中小規模法人部門で認定を受けた場合には「緑」のロゴマークが使用できるようになります。
さらに、ホワイト500やブライト500に選出された企業は「ホワイト500」または「ブライト500」の記載があるロゴマークを使用できるようになります。
ホワイト500:健康経営優良法人「大規模法人部門」で認定された法人のうち上位500法人に与えられる認定
ブライト500:健康経営優良法人「中小規模法人部門」で認定された法人のうち地域で健康管理の発信を行っている上位500法人に与えられる認定
なお、ロゴマークには使用可能期間があり、ロゴマークに記載されている認定年度(西暦)の年度内のみ使用可能です。
使用可能期間後もロゴマークを使用したい場合には、再度「健康経営優良法人」の認定を受ける必要があります。
3.健康経営優良法人の認定を受けることで得られる3つのメリット
従業員の健康管理を経営的な視点で考え、実践することで認定を受けられる「健康経営優良法人」。
認定を受けることで企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここからは、健康経営優良法人の認定を受けることで企業が得られる3つのメリットについて詳しく解説します。
3-1.メリット①企業のイメージアップが期待できる
健康経営優良法人の認定は、企業が積極的に従業員の健康管理に取り組んでいる証明となり、認定を受けることで企業のイメージアップが期待できます。
健康経営を実施することにより健康診断の受診率が向上すれば、従業員全体の健康状態そのものの改善ができ、従業員の健康を守ることが可能です。
従業員が健康で長く働くことができる環境を整備することは、生産性の向上や組織の活性化につながり、最終的には企業の利益率アップも期待できます。
3-2.メリット②優秀な人材の確保が有利になる
求職者が就職先企業を選ぶ際の条件では、「働きやすさ」や「健康へ配慮してもらえるか」が多く挙げられています。
健康経営優良法人の認定を受けることで、このどちらの条件にも該当することができるため、優秀な人材を確保しやすくなります。
また、従業員の健康管理を行っている企業にはいわゆる「ホワイト企業」のイメージもあるため、採用活動時にも応募を集めやすくなるでしょう。
3-3.メリット③国や自治体からの多様なインセンティブを受けられる
健康経営優良法人の認定を受けると、国や自治体が行う多様なインセンティブを受けることができます。
主なインセンティブは以下の通りです。
・中小企業向け補助金の審査における加点優遇措置
・働き方改革推進支援資金の利用
・在留資格審査手続きの簡素化
・ハローワーク求人票へのロゴマークの使用
・公共調達における入札参加資格等級の格付けへの加点(山形県)
・各種個人ローンの金利優遇措置(東京都)
・人材活躍応援融資の利用(大阪府)
自治体からのインセンティブに関する詳しい情報は、健康経営優良法人の情報ポータルサイト「ACTION!健康経営」から確認できます。
【ACTION!健康経営│補助金・インセンティブ「地域の取り組み」】
4.健康経営優良法人の認定は補助金申請が有利になる!
健康経営優良法人の認定を受けることで、中小企業向けに実施されている補助金で、加点優遇措置を受けられるようになります。
加点優遇が受けられる中小企業向け補助金 |
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補助金名 | 補助金概要 | 補助内容 |
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 | 革新的な製品やサービスの開発や生産プロセスの改善などを支援 | 補助率1/2もしくは2/3
補助上限額2,250万円 |
IT導入補助金 | 業務効率化、生産性向上を目的としたITツールの導入を支援 | 補助率1/2
補助上限額450万円 |
事業継承・引継ぎ補助金 | 事業継承を機に行う経営革新的な取り組みなどを支援 | 補助率1/2または2/3
補助上限額600万円 |
Go-tech補助金 | 中小企業などがものづくり基盤技術の高度化に向けて大学などと連携して行う研究開発を支援 | 補助率2/3以内
補助上限額 通常枠:9,750万円 出資獲得枠:3年間合計3億以下 |
事業再構築補助金 | 新市場進出や事業転換などを行う事業者を支援 | 補助率1/2~3/4
補助上限額500万円~5億円 |
補助金申請は、加点項目を意識することで有利に進めることができます。
補助金・助成金の活用を検討中の方は、合同会社SCSへご相談ください。
5.健康経営優良法人の認定基準
健康経営優良法人の認定を受けるためには、認定基準を満たさなければなりません。
認定基準は、以下5つの大項目を主軸に評価項目が定められています。
・経営理念、方針
・組織体制
・制度、施策実行
・評価、改善
・リスクマネジメント
評価項目は、大規模法人部門と中小規模法人部門で内容が異なります。
ここからは、部門別に健康経営優良法人の認定基準を解説します。
5-1.大規模法人部門
大規模法人部門では、認定を受けるために「必須」となる要件と、複数ある項目の中から定められた項目数を達成する「選択」要件があります。
どの段階まで自社の取り組みが進んでいるかを把握し、不足している要件を満たせる取り組みを実施しましょう。
大項目 | 評価項目 |
1.経営理念・方針 | 健康経営の方針などを社内外へ発信 |
従業員パフォーマンス指標および測定方法の開示 | |
2.組織体制 | 健康づくり責任者が役員以上である |
産業医・保健委の関与 | |
健康保険組合等保険者との協議・連携 | |
3.制度・施策実行 | 健康経営の具体的な推進計画 |
受診勧奨の取り組み | |
適切な働き方の実現および育児・介護の両立支援 | |
メンタルヘルス不調者への対応に関する取り組み | |
感染症予防に関する取り組み | |
4.評価・改善 | 健康経営の実施についての効果検証 |
5.法令遵守・リスクマネジメント | 定期健診の実施、ストレスチェックの実施など |
上記は、大規模法人部門の認定要件「必須要件・選択要件」の一部です。
詳しい認定要件や評価項目に関しては、下記のページをご覧ください。
【ACTION!健康経営│健康経営優良法人2024(大規模法人部門)認定要件】
5-2.中小規模法人部門
中小規模法人部門では、法令順守・リスクマネジメントに関する取り組みは自己申告となっています。
申請時には、認定申請書に記載されている誓約事項を確認し、誓約者名と代表従業員名の記入を必ず行いましょう。
大項目 | 評価項目 |
1.経営理念 | 健康宣言の発信、経営者の健診受診 |
2.組織体制 | 健康づくり担当者の役職 |
3.制度・施策実行 | 健康経営の具体的な推進計画 |
管理職または従業員に対する教育の機会を設定 | |
長時間労働者の対応に関する取り組み | |
4.評価・改善 | 健康経営の取り組みに対する評価と改善 |
5.法令遵守・リスクマネジメント | 定期健診の実施など |
認定要件には「必須要件」と企業が要件を選択する「選択要件」があり、上記で紹介た要件はその一部です。
詳しい認定要件や評価項目に関しては、下記のページをご覧ください。
【ACTION!健康経営│健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)認定要件】
6.健康経営優良法人の申請方法
健康経営優良法人「大規模法人部門」「中小規模法人部門」それぞれの申請方法を紹介します。
初めて申請を行うときには、健康経営優良法人の情報サイト「ACTION!健康経営」より、新規IDの登録・発行が必要です。
※健康経営優良法人2024認定の申請用ID受付は2023年10月で終了しています。
次回以降に申請を検討している方は、情報サイトで受付情報の確認を行いましょう。
【ACTION!健康経営│公式サイト】
6-1.大規模法人部門
健康経営優良法人の申請には、申請用のIDが必要です。
申請用IDをまだ持っていない方は、申請受付開始後に情報サイト「ACTION!健康経営」より申請IDの登録・発行を行いましょう。
過去に健康経営優良法人の申請を行ったことがある方や、認定を受けたことがある方には、申請受付開始時に登録しているメールアドレスへ「申請受付開始」のお知らせメールが届きます。
健康経営優良法人「大規模法人部門」の申請方法は下記の通りです。
2.自社の取り組み状況を記載のうえ、申請用ページより指定された期日内にアップロード
3.申請内容に基づき審査
4.審査結果を基に、健康経営優良法人の認定委員会で審議
5.日本健康会議が「健康経営優良法人」を認定
認定を受けたのち、登録内容や取り組み内容に変更があった場合には、「変更・返納・取消規約」に則り、変更事項報告書の提出を行いましょう。
【ACTION!健康経営│申請について「大規模法人部門」】
6-2.中小規模法人部門
中小規模法人部門で申請を行う場合には、協会かんぽや健康保険組合連合会などが実施している健康宣言事業への参加が必要です。
企業が加入している保険が健康宣言事業を実施していない場合には、自治体が実施している健康宣言事業への参加で代替可能です。
中小規模法人部門の申請方法は以下の通りです。
2.「健康経営優良法人認定申請書」を「ACTION!健康経営」よりダウンロード
3.自社の取り組み状況を記載し、申請用ページより期日内にアップロード
4.申請内容に基づき審査
5.審査に基づき認定員会で審議
6.日本健康会議より「健康優良法人」が認定される
認定までの詳しい流れやスケジュールについては「ACTION!健康経営」の「申請について」をご覧ください。
【ACTION!健康経営│申請について「中小規模法人部門」】
7.健康経営優良法人は「働く人の健康を経営的な視点で支える企業」を支援する制度!
健康経営優良法人は、従業員の健康管理に積極的に取り組み働きやすい環境づくりを目指す企業が、社会的な評価を得られる環境を作るために始められた認定制度です。
認定を受けることで、企業のイメージアップや利益率アップが期待できるほか、国や自治体が行う多様なインセンティブを受けることができます。
健康経営優良法人の認定で受けることができるインセンティブのなかには「補助金申請時の加点優遇措置」があります。
補助金の申請は、加点項目を意識することで有利に進めることが可能です。
しかし、公募要領の把握や加点項目の意識には、多くの時間と手間がかかってしまうため、なかなか手が付けられないという企業も多いのではないでしょうか。
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