早期再就職支援等助成金とは?雇用拡大に活用できる助成金をわかりやすく紹介!

早期再就職支援等助成金とは

早期再就職支援等助成金とは、さまざまな理由で離職する労働者への「再就職支援」や、「中途採用の拡大」に取り組む事業主を支援する助成金制度です。

近年日本では、少子高齢化にともなう「働き手不足」が深刻な問題となっています。
優秀な人材を確保するためには誰もが働きやすい環境を整備するなどの雇用促進に取り組む必要があり、早期再就職支援等助成金は、このような環境整備に役立つ助成金です。

今回は、雇用拡大に活用できる「早期再就職支援等助成金」についてわかりやすく紹介します。

1.早期再就職支援等助成金の概要

早期再就職支援等助成金は、再就職援助計画などの対象者や、特定受給資格者などを正社員として雇い入れる事業主を助成する制度です。
令和6年4月に「労働移動支援助成金」の見直しが行われたことで、新たに新設されました。

早期再就職支援には4つの支援コースがあり、働き手の確保や人材育成に活用することができます。
労働者側からしても、就職のための訓練機会や再就職のチャンスを得ることができるため、職業の選択肢が大幅に広がり、キャリアアップにつなげることが期待できる助成金です。

2.早期再就職支援等助成金の支援コース

早期再就職支援等助成金では、企業の状況や実施する取り組みの内容によって4つの支援コースが用意されています。
ここからは、各支援コースの概要や対象者、申請要件などを詳しく紹介します。

2-1.再就職支援コース

企業規模の縮小などにより離職を余儀なくされる労働者に対して、再就職支援を行う事業主を支援するコースです。
このコースへの申請を行う場合には、再就職援助計画を作成して公共職業安定所長の認定を受けるか、求職活動支援基本計画を作成して都道府県労働局へ提出する必要があります。

企業の状況が厳しく、労働者をやむを得ず離職させるときに活用できる当支援コースですが、どんな状況下であっても解雇や雇い止めのルールには従わなければなりません。
再就職支援コースの活用を検討する方は、解雇や雇い止めのルールについても正しく理解しておきましょう。
【厚生労働省│事業主の方へ(厳しい経済環境下での労務管理のポイント)

2-1-1.対象者

再就職支援コースの対象者は、以下の要件をすべて満たす必要があります。
どれか1つでも要件を満たしていない場合には、支給対象外となり、助成金の申請はできません。

【再就職支援コースの支給対象者要件】
・計画対象被保険者または支援所対象被保険者のいずれかに該当する
・申請事業主の行う再就職に関わる支援を受ける
・申請事業主に一般被保険者などとして継続して1年以上雇用される
・申請事業主の関連する事業所への復帰見込みがない
・要領に定められる時点において、再就職先が未定であること
・職業紹介事業者などによって「退職強要」を受けたと受け止めていないこと
・職業紹介事業者などに対する委託によって行われる支援の場合は、支援の承諾をしていること
【参照│早期再就職支援等助成金「再就職支援コース」支給要領

このほかにも、助成金を活用できる事業主や助成金の対象となる措置については、さまざまな要件が定められています。
詳しくは助成金の支給要領でご確認ください。

2-1-2.申請要件

再就職支援コースでは、申請事業主が行う取り組みごとに「支給対象措置」が異なり、それぞれに申請要件が定められています
主な申請要件は以下の通りです。

支給対象措置 対象となる取り組み
再就職支援 ・委託による再就職支援

・委託先職業紹介事業者に要件を満たす訓練を実施させる

・委託先職業紹介事業者に要件を満たすグループワークを実施させる

休暇付与支援 ・再就職援助計画の認定または求職活動支援基本計画の提出

・離職までの期間に対して円滑な求人活動に活用できる休暇の付与

職業訓練実施支援 ・再就職援助計画の認定または求職活動支援基本計画の提出

・教育訓練施設などと委託契約を締結したうえで、訓練を実施する

【参照│早期再就職支援等助成金「再就職支援コース」支給要領

なお、いずれの取り組みでも「再就職の実現」が必要不可欠な要件となります。
取り組みを行った結果、再就職の実現が困難であった場合には、助成金の対象外となるので注意が必要です。

2-1-3.助成金額

再就職支援コースでは、支給対象措置ごとに助成金額が定められています
以下は、中小企業における支給対象措置ごとの1人あたりの助成金額です。

再就職支援

通常 委託費用×1/2(2/3)
特例 委託費用×2/3(4/5)
訓練加算 訓練実施にかかる委託費用×2/3

※訓練実施時間数に応じて上限あり

グループワーク加算 3回以上の実施で1万円

休暇付与支援

再就職実現時 該当休暇1日あたり8,000円を助成

※上限180日分まで

職業訓練実施支援

経費助成 訓練実施にかかる委託費用×3/4

※訓練実施時間に応じて上限あり

【参照│早期再就職支援等助成金「再就職支援コース」支給要領

中小企業事業主以外の助成金支給額については、支給要領または公式サイトでご確認ください。

2-2.雇入れ支援コース

再就職援助計画または求職活動支援書の対象者となった労働者や、雇用保険の特定受給資格者を早期に雇い入れた事業主に対する助成を行っているコースです。
この支援コースは、労働者を早期に雇い入れ、継続的な雇用が確実であると認められた事業主のみが申請できます。

労働者の早期再就職を促進するために実施されているため、「早期雇入れ支援」と「人材育成支援」への活用が可能です。
【厚生労働省│早期再就職支援等助成金(雇入れ支援コース)

2-2-1.対象者

雇入れ支援コースでは、以下の支給対象者要件に該当している労働者と事業主のみ申請が可能です。

【雇入れ支援コース支給対象者要件】
(労働者)
・再就職援助計画の対象労働者 または 雇用保険の特定受給資格者
(事業主)
・対象となる労働者を離職日翌日から3か月以内に雇い入れた
・対象となる労働者を6か月以上継続雇用している
【参照│早期再就職支援等助成金(雇入れ支援コース)

また、事業主が実施する取り組みによって、支給対象者要件が追加される場合があります。
詳しくはパンフレットをご覧ください。

2-2-2.申請要件

雇入れ支援コースの申請には、以下の要件すべてを満たす必要があります。

【雇入れ支援コース 申請要件】
・対象となる労働者を離職日翌日から3か月以内に期限のない労働者として雇い入れる
・雇用保険の一般被保険者として雇い入れる
・雇い入れから6か月以上の継続した雇用を行う
・支払われる賃金が、離職前と比較して5%以上引き上げられている
【参照│早期再就職支援等助成金「雇入れ支援コース」支給要領

このほかに、支給要領で定められている「人材育成支援」を実施し、その要件を満たせば、人材育成としての給付を受けることができます。
なお、人材育成支援での支給を受ける場合には、雇い入れ日から6か月以内に職業訓練を実施しなければなりません。

2-2-3.助成金額

雇入れ支援コースでは「早期雇入れ支援」と「人材育成支援」によって助成金額が異なります

早期雇入れ支援

通常助成 支給対象者1人につき30万円
優遇助成 支給対象者1人につき40万円

人材育成支援

賃金助成 ・通常助成 960円/時間

・優遇助成 1,060円/時間

経費助成 ・通常助成 10万円~50万円

・優遇助成 25万円~60万円

※訓練実施時間により異なる

OJT実施助成 20万円

【参照│早期再就職支援等助成金(雇入れ支援コース)

上記表は、中小企業の場合の助成金額例です。
中小企業以外の助成金額例や優遇助成が受けられる事業主については、公式サイトでご確認ください。

2-3.中途採用拡大コース

中途採用者の雇用管理制度を整備し、雇用の拡大に取り組む事業主を支援するコースです。
中途採用率を拡大させる取り組みや45歳以上の中途採用率を拡大させる取り組みを行うことで助成金が支給されます。

この支援コースでは、対象となる労働者の雇い入れ前日までに「中途採用計画」の作成と提出が必要です。
また、常時雇用する労働者が300人以上の事業主は、中途採用に関する情報の公開も必要となります。
【厚生労働省│早期再就職支援等助成金「中途採用拡大コース」

2-3-1.対象者

中途採用拡大コースでは、以下の要件すべてを満たす労働者・事業主を対象に支援を行っています。

【中途採用拡大コース 対象者要件】
(労働者)
・申請事業主に中途採用として雇い入れされた
・雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として雇い入れされた
・雇用期間に定めがない労働者として雇い入れされた
・雇い入れ日前日から起算してその日以前1年間に該当事業主の事業所で働いたことがない
・(45歳以上の中途採用率拡大の場合)雇い入れ時の年齢が45歳以上である
(事業主)
・雇用保険適用事業所である
・支給のために行われる調査に協力する
・対象労働者へ支払期日までに賃金を支払っている
・要領に定める書類を整備し、適切に保管している
・中途採用計画の提出前日から起算して6か月前の日から支給申請提出日までに事業主都合での解雇をしてない
・雇用保険失業給付の手続きをとった労働者が中途採用計画の提出日における雇用保険被保険者数に対して6%を超えていない
・過去にこのコースでの助成を受けたことがない
・中途採用により雇い入れた労働者の割合を公表している
【参照│早期再就職支援等助成金ガイドブック-中途採用拡大コース-

支給要領では、上記に該当する労働者・事業主であっても、助成金が支給されない場合についての詳細が記載されています。
申請を検討している方は、助成金の支給対象要件と合わせて不支給要件を確認しましょう。

2-3-1.対象者

中途採用拡大コースでは、以下の要件すべてを満たす労働者・事業主を対象に支援を行っています。

【中途採用拡大コース 対象者要件】
(労働者)
・申請事業主に中途採用として雇い入れされた
・雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として雇い入れされた
・雇用期間に定めがない労働者として雇い入れされた
・雇い入れ日前日から起算してその日以前1年間に該当事業主の事業所で働いたことがない
・(45歳以上の中途採用率拡大の場合)雇い入れ時の年齢が45歳以上である
(事業主)
・雇用保険適用事業所である
・支給のために行われる調査に協力する
・対象労働者へ支払期日までに賃金を支払っている
・要領に定める書類を整備し、適切に保管している
・中途採用計画の提出前日から起算して6か月前の日から支給申請提出日までに事業主都合での解雇をしてない
・雇用保険失業給付の手続きをとった労働者が中途採用計画の提出日における雇用保険被保険者数に対して6%を超えていない
・過去にこのコースでの助成を受けたことがない
・中途採用により雇い入れた労働者の割合を公表している
【参照│早期再就職支援等助成金「中途採用拡大コース」支給要項

中途採用率のポイントに関する計算方法については、パンフレットや支給要領に記載されていますので、そちらをご確認ください。

2-3-3.助成金額

中途採用拡大コースの助成金額は以下のとおりです。

中途採用拡大コース助成金額

中途採用率の拡大 50万円
45歳以上の中途採用率の拡大 100万円

【参照│早期再就職支援等助成金「中途採用拡大コース」

「45歳以上の中途採用率の拡大」で申請を行う場合、助成金の支給に関して別途要件が定められています。
詳しい情報は支給要領または公式サイトでご確認ください。

2-4.UIJターンコース

UJIターンコースは、東京圏から地方への移住者を採用するためにかかる経費を助成する支援コースです。

【用語解説】
東京圏:東京都心から50~70Kmの範囲にある「東京都」「神奈川県」「千葉県」「埼玉県」「茨城県」のこと。

採用計画を作成し、その期間内に対象となる労働者を1人以上雇い入れた事業主を対象に支援を行っています。
このコースでは、地方公共団体が開設・運営しているマッチングサイトへの求人掲載が必要です。
申請を検討している方は、事前に登録しておくことをおすすめします。

2-4-1.対象者

以下の「支給対象となる労働者」を1人以上雇い入れた事業主が助成対象となります。

【支給対象となる労働者】
・東京圏からの移住者
・地方公共団体が開設・運営するマッチングサイトに掲載されている申請事業主の求人に応募
・雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として雇用される
・期間を定めない継続して雇用する労働者として雇用される

上記以外にも、支給対象となる事業主にはさまざまな要件が定められています。
詳しくは、支給要領「0301.支給対象事業主」をご確認ください。

2-4-2.申請要件

UIJターンコースで助成金を受給するためには、以下の申請要件を満たさなければなりません。

【UIJターンコース 申請要件】
・採用活動にかかわる計画書を事業所所在地域を管轄する労働局に提出、認定を受ける
・計画書に定めた計画期間内に、以下の取り組みを行うこと
(1)募集や採用に必要なパンフレットなどの作成・印刷
(2)企業公式サイト・PRに向けた動画の作成・回収
(3)就職説明会や面接会などの実施(オンラインで実施する場合も含む)
(4)外部専門家からのコンサルティング
【参照│早期再就職支援等助成金「UIJターンコース」

計画書に定める計画期間は、6か月以上12か月以内で設定しなければなりません。
期間内で効果的に採用活動を実施できるように、取り組みの内容について十分に検討する必要があります。

2-4-3.助成金額

UIJターンコースでは、採用活動にかかる経費のうち、支給申請書の提出日までに支払いが完了している分について「経費助成」を実施しています。
助成率・助成金額上限は以下の通りです。

助成率 上限
中小企業 1/2 100万円
中小企業以外 1/3 100万円

【引用│早期再就職支援等助成金「UIJターンコース」

中小企業の範囲については、公式サイトにて明記されていますので、そちらも合わせてご確認ください。

3.早期再就職支援等助成金の申請から受給までの流れ

早期再就職支援等助成金では、支援コースごとに申請から受給までの流れが異なります。
ここからは、それぞれのコースごとの「申請から受給までの流れ」をわかりやすく紹介します。

3-1.再就職支援コース

再就職支援コースでは「支給対象となる労働者の再就職日以降、助成対象期限の翌日から起算して2か月以内」に申請を行います。

【申請から受給までの流れ】
1.再就職援助計画または求職活動支援基本計画の提出
2.支給要領に定められている取り組みの実施
3.支給対象となる労働者の離職
4.支給対象となる労働者の再就職実現
5.支給申請
6.助成金の支給

申請に必要な書類や雇用関連助成金の共通要件などに関する書類については、公式サイトからダウンロード可能です。

3-2.雇入れ支援コース

雇入れ支援コースでは、実施する取り組みごとに支給申請期日が定められており、雇用保険適用事業所ごとに必要書類の提出が必要です。

【申請から受給までの流れ】
1.再就職援助計画または求職活動支援基本計画の提出
2.支給対象となる労働者を離職日翌日から3か月以内の早期雇い入れ
3.人材育成支援の実施
4.職業訓練の実施
5.支給申請
6.助成金の支給

人材育成支援を行わない場合には、対象となる労働者の雇い入れ後に支給申請を行います。
取り組みごとに異なる支給申請時期については、公式サイトまたは支給要領にてご確認ください。

3-3.中途採用拡大コース

中途採用拡大コースでは、支給対象となる労働者を雇い入れる「前日」までに、中途採用計画の作成・提出が必須です。
また、企業規模によっては「中途採用に関する情報公開」も必要となります。

【申請から受給までの流れ】
1.中途採用計画の作成
2.中途採用に関する情報の公開(常時雇用する労働者300人以上の事業主のみ)
3.中途採用計画を事業所所在地域を管轄する労働局へ提出
4.中途採用者の雇用管理制度の整備
5.対象となる労働者の雇い入れ
6.中途採用計画で定めた助成金対象となる取り組みの実施
7.助成金の支給

中途採用計画書や支給申請書などの必要書類は公式サイトからダウンロード可能です。

3-4.UIJターンコース

UIJターンコースでは、採用計画書の提出が必要です。
採用計画書は事業所ごとに作成し、計画書の提出日翌日から3か月以内の範囲で、計画期間の開始時期を設定します。

【申請から受給までの流れ】
1.採用計画書の作成・提出
2.支給要領に定められる「採用活動」の実施
3.対象となる労働者の雇い入れ
4.計画期間の終了2か月以内に支給申請書を提出
5.助成金の支給

対象となる労働者の雇い入れが、計画期間終了直前であった場合には、雇い入れ後6か月経過の翌日から2か月以内に支給申請書を提出します。

4.優秀な人材の確保を目指すなら助成金を活用しよう!

少子高齢化による働き手の確保が難しくなってきている昨今、優秀な人材を確保して企業成長を目指すのであれば、早期再就職支援等助成金をはじめとした助成金や補助金などの支援制度を積極的に活用していくのがおすすめです。

合同会社SCSでは、日本全国で実施されている支援制度についての相談を随時受け付けています。
助成金や補助金などの支援制度をより効果的に活用したい方は、ぜひお問い合わせください。

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監修者プロフィール

補助金コンサルタント 上田 晃生

1977年生まれ神奈川県横浜市出身。
OA機器の営業から飲食業界に入り店長・統括等を経験し、経営コンサルタント会社へ転職。

2021年に合同会社SCSを設立し独立。

経営者の潜在的な要望を引き出し、事業拡大を実現する「コンサルティング型」によって、1年間で100件以上の補助金申請をサポートし、1憶5千万円以上の採択を実現。

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